与野党は政治改革を巡り、企業・団体献金に関する結論を2025年3月末まで先送りした。3月末は通常国会で25年度予算案の審議が大詰めを迎える。企業献金を含む「政治とカネ」問題と予算案をからめた与野党の駆け引きが強まる可能性がある。
24日に成立した3つの政治改革関連法は与野党から幅広い賛成を得た。自民党は使途を非公開にできる「公開方法工夫支出」を関連法案から削除し、野党に歩み寄った。第三者機関の設置場所は公明党が他党の意見を受け入れて国会に決まった。
溝が埋まらなかったのは企業・団体献金の扱いだ。自民党は国会審議で「企業献金は悪で、個人献金は善という立場をとらない」と繰り返して禁止に反対した。立憲民主党は「改革の本丸」(野田佳彦代表)として禁止を迫った。
与野党は17日、衆院政治改革特別委員会の理事会で立民などが提出した企業・団体献金禁止法案について25年3月末までに結論を得ることで合意した。
自民党幹部は「第三者に議論を委ねることも結論に含まれる」と話し、禁止論をかわす構えだ。
石破茂首相は24日の記者会見で「憲法21条の表現の自由に淵源を求めて企業・団体献金はあるのではないか」と述べた。企業に政治献金の自由が憲法上認められるとの見解を最高裁が示した1970年の八幡製鉄事件判決を念頭にした発言だ。
首相は「来年本当に正面から民主主義に必要なコストは何か議論を深める」と論戦への意欲もみせた。
自民党は、企業献金の禁止に慎重な立場をとる国民民主党との連携に期待を寄せる。国民民主の浜口誠政調会長は22日のNHK番組で「専門家の意見も聞きながら、与野党で納得できる枠組みをつくることが政治の役割だ」と強調した。
第三者に議論を委ねるべきだとする自民党の考えと共通する。自民、公明両党は少数与党になったものの、国民民主の協力が得られれば禁止法案を否決できる。
自民党内では立民が25年度予算案の成立と引き換えに企業献金の禁止を迫るシナリオを警戒する声がある。立民の安住淳氏が予算委員長を務めており、予算の審議や委員会運営を差配する。
立民幹部は「与党は予算成立を最優先して企業献金を巡って譲歩案を出さざるを得ないだろう」との認識を示す。国民生活に関わる予算案を3月末までに成立させられなければ政府・与党が責任を問われる公算が大きい。
自民党が25年度予算案の成立に向けて秋波を送る日本維新の会も企業献金の禁止を提唱する。国民民主が予算案に賛成しない場合、維新の協力を得るために企業献金の扱いで妥協を強いられる可能性が出てくる。
自民党と国民民主は「年収103万円の壁」の引き上げ幅を巡り隔たりが残る。国民民主幹部は引き上げ幅が十分でなければ予算案に賛成できないとたびたび言及している。
自民党の政治改革本部(渡海紀三朗本部長)の幹部は譲歩案として企業献金の上限を下げる案に触れる。上限は資本金の規模に応じて異なり最大1億円になっている。上限を引き下げれば企業献金への依存度を下げる姿勢をアピールできるとみる。
首相は24日の記者会見で「補正予算のときがそうであったように、丁寧な説明に努める」と野党や世論に耳を傾ける考えを強調した。
立民も弱点を抱える。立民などが提出した法案は政治団体からの献金を禁止対象から外している。支持母体とする労働組合に関係する政治団体からの献金を維持する狙いがあるとして与野党から批判を浴びる。維新は立民の法案に賛同していない。
立民は25年夏の参院選や東京都議選の争点として引き続き政治資金問題を据える戦略だ。企業献金の禁止に加え、旧安倍派の会計責任者の参考人招致などを求めて自民党を揺さぶる。
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