1票を託す有権者(イメージ)

 27日に投開票された衆院選で連立与党の自民、公明は大幅に議席を減らし、15年ぶりの過半数割れに追い込まれた。政権の枠組みがどうなるのかは不透明なままだが、有権者のくらしへの不安は尽きない。塗り変わった国会の勢力図に何を思うのか。選挙から一夜明けた街で聞いた。

 JR大阪駅北側に今秋オープンした公園でベビーカーを押していた大阪府高槻市の女性看護師(28)は今回の衆院選で、小選挙区は維新に、比例は国民民主にそれぞれ1票を投じた。現在、育休中。長女(10カ月)が生まれたことで、より子育てしやすい社会を望むようになったという。

 小選挙区は教育無償化など現役世代への投資を掲げる維新候補に、比例はSNS(ネット交流サービス)の発信やテレビでの党首討論を見て国民民主に決めた。だが、いずれも「消去法だった」と話す。野党が政権交代を果たしたとしても、「本当に少子化対策を実現できるのか」と実行力に疑問も感じたからだ。

 一方で「経済的な事情で子どもを産みたくても産めない人が多い社会を変えてほしい」との願いもある。政権の先行きは見通せないが、「新たな枠組みができることにも少しだけ期待している」と話した。

 与党に期待する子育て世代もいる。東京都世田谷区の男性会社員(32)は長男(1)が生まれたことを機に、約10年ぶりに投票した。現在、第2子を妊娠中の妻と各党がどれだけ子育て政策に力を入れているかを比較して与党を選んだ。「(裏金問題で)たたかれているけれど、今の制度を作った安心感があり、変わってほしくない」と政治の安定を求めた。

 自民が大敗する要因となった党派閥による裏金事件については、引き続き厳しい声が上がった。東京都豊島区の男性会社員(60)はこれまで自民に入れてきたが、今回は立憲に投票した。「野党が頼りなかったので仕方なく投票してきた。今回は裏金や旧統一教会を巡る問題への対応が許せなかった」と話す。過去の投票先は与党と野党が半々ずつという東京都江戸川区の男性会社員(40)も立憲を選んだ。「自民には国民の声を聞くという印象がない。政策に大きな違いはなく、立憲の方が反対意見を聞いてくれるという期待感がある」と話す。

 石破茂首相への注文も聞かれた。大阪府吹田市の男性会社員(60)は「石破氏には物価高対策など庶民に寄り添う政治を期待したが、就任直後の解散で、支持・不支持を判断する間もなかった」と話す。今後の政権運営については「野党がどれだけ一致できるかが鍵になると思うが、それぞれ政策があり、一つになるのは簡単ではないだろう」と推測。「石破政権は何もしないまま終わってしまうのではないか」と政治の停滞を懸念した。【長沼辰哉、長屋美乃里】

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