衆院選の投開票日から一夜明け、報道陣の取材に応じる沖縄県の玉城デニー知事=那覇市で2024年10月28日午前8時45分、喜屋武真之介撮影

 27日投開票された衆院選で、沖縄県の4選挙区では玉城デニー知事が支援した「オール沖縄」勢力の野党候補と自民候補が2議席ずつを分け合った。米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設計画に対する賛否は埋め立て工事が進む中、最大の争点にはならなかったが、連立与党の自民、公明両党が過半数割れしたことで計画の先行きは不透明さを増している。

 「政府は工事を直ちに中断し、対話による解決を望む沖縄県と向き合ってほしい。国会でもそれを後押ししてほしい」。衆院選投開票から一夜明けた28日、辺野古移設に反対する玉城知事は那覇市で取材に応じ、埋め立て工事の中止や一旦停止を公約に掲げた立憲民主党や国民民主党などの野党勢力が議席を大幅に伸ばしたことに期待を示した。

 今後の政権枠組み次第では移設工事の予算なども与野党対立の焦点になる可能性がある。沖縄1区(那覇市など)で全国唯一の共産党の選挙区議席を守った赤嶺政賢氏は28日、移設中止を求める県の訴えについて「自公が過半数の時は聞く耳を持たなかったが、今後は届くはずだ」と語った。

 一方、県内で移設阻止に対する期待感は低調だ。野党候補に投票した那覇市の男性公務員(57)は27日の取材に、自民派閥の裏金事件を挙げ「野党を育てるべきだと思った」とその理由を語ったが、移設阻止は「ほぼ手遅れだ」と話した。

 県内4選挙区でオール沖縄勢力が制したのは、2021年の前回選と同じ1、2区にとどまり、自民に逆風が吹く中でも議席を伸ばせなかった。全県選挙となる25年の参院選沖縄選挙区や26年の知事選の結果次第では、民意を盾に辺野古移設に反対してきた状況も足元から崩れる。自民県連幹部は「県民が求めているのは移設反対よりも地域振興だ」と強調した。

 沖縄の政治状況に詳しい佐藤学・沖縄国際大教授(政治学)は辺野古移設問題について「県が工事を止められないことははっきりしている。オール沖縄は移設計画の予算規模と工事にかかる期間などの妥当性を、国政レベルで問う努力がこれまで以上に求められる」と指摘した。

 オール沖縄の今後のあり方については「衰退傾向を止めるには、別の結集軸が必要になる。例えば南西諸島の軍事力強化について『専守防衛に沿った強化は認めるが、敵基地攻撃能力を持ったミサイル配備には反対する』というふうに保守層も取り込めるような争点設定の立て直しをすべきだ」と語った。【日向米華、池田真由香、比嘉洋】

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