日印両政府は20日、ニューデリーで外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)を開く。インド太平洋地域の情勢を踏まえ、安全保障の協力の段階を引き上げる。部隊間の共同訓練の質と量を拡充し、日本から軍艦用の通信アンテナを輸出する方針も伝える。

中国の海洋進出に対抗し、切れ目のない防衛体制をとれるようにする。

上川陽子外相、木原稔防衛相、インドのジャイシャンカル外相、シン国防相が参加する。日印の2プラス2は2019年に設けた枠組みで、22年9月以来、2年ぶりの開催となる。成果は共同文書にまとめて発表する。

インドは「戦略的自律」を掲げ、どこの国とも同盟を結ばない中立外交を展開する。ロシアと関係が深い一方で、中国とは国境問題で対立関係にある。新興・途上国の「グローバルサウス」の大国として国際社会での発言力が高まっている。

2プラス2に先立ち上川、木原両氏は19日、インドのモディ首相と会談した。日印の安保協力の拡大で一致した。

木原氏は「共同訓練や技術協力などを進展させていくことは重要だ」と伝えた。モディ氏は防衛産業や半導体などの分野で日本とパートナーシップを強化したいと語った。

インドのモディ首相(右)と会談する上川外相(中央)と木原防衛相=19日、ニューデリー(外務省提供・共同)

2プラス2の協議を通じ、中国の軍備増強への備えに加え、サイバーや宇宙などの新領域で協調する狙いがある。

包括的な協力体制を取るために、08年10月に署名した「安全保障協力に関する共同宣言」を改定すると確認する。年内にモディ首相が来日して日印首脳間で合意をめざす。

「自由で開かれたインド太平洋」を推進すると盛り込む。宇宙・サイバー分野での連携の重要性に触れるかたちで書き換える。

自衛隊とインド軍の2カ国の共同訓練は23年に陸海空で計6回実施した。インド洋や沖縄周辺を含め、両国の周辺領域での訓練を重ねる。同年1月には航空自衛隊がインド空軍と日本周辺空域で初めて戦闘機の共同訓練を開催した。

外国軍の戦闘機が日本で自衛隊と訓練するのは、米国、英国、オーストラリア、ドイツに次いで5カ国目だった。戦闘機の派遣は空中給油や長距離飛行などの高い運用能力が必要で、両国の提携を示す機会となった。

2プラス2の協議で共同訓練の回数を増やして中身も実践的にしていくと申し合わせる。有事を念頭に置けば、平時から部隊間の動きを相互に確認しておく必要がある。米国や豪州なども交えて訓練の枠組みを広げる。

インドに輸出する軍艦用アンテナ「ユニコーン」は、NECなどの日本企業が共同開発した。

海上自衛隊が最新鋭の護衛艦に搭載しており、相手が存在に気づきにくいステルス性に優れる。相手が発信した電波を捉えられる範囲が広く、ミサイルや無人機の動きを早期に探知しやすい。

日印の部隊間で同じ装備品を使い、現場での情報共有などを円滑にする。インドは歴史的なつながりを背景に、ロシアから武器調達を続けている。近年は調達先の分散に動いており、日本が脱ロシア依存を促す意図もある。

日本はこれまで日米豪印4カ国の「Quad(クアッド)」をはじめ、さまざまな枠組みでインドに国際ルールを守る重要性を説いてきた。

2プラス2でもロシアによるウクライナ侵略や中国の軍備増強に対し、法の支配に基づく国際秩序を維持・強化する重要性を伝達する。

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