被災者の歯を治療する田中健大さん=石川県輪島市の門前中で
田中さんは、歯の治療が受けられない被災者を支援しようと、災害派遣医療チーム(DMAT)に許可を取り、同日早朝に現地入りした。歯の痛みを訴える人に口腔ケアの状況を聞き取り、歯の汚れを調べ、治療や歯石の除去、入れ歯の修理も担った。 避難生活を送る70代男性は「着の身着のまま逃げてきて、歯ブラシを持っていない人も多かった。当初は水も不足していて、歯磨きのために水を使うことに申し訳なさもあった」と話す。田中さんは歯ブラシ500本を避難所に寄付したが、すぐに無くなったといい「歯ブラシの支援は余るくらい必要」とも。 「口の中を清潔に保つ事は大事。細菌が繁殖して肺炎になると、命を失ってしまうリスクもある」と、田中さんは災害関連死を心配する。中には、震災後から一度も歯磨きをできていない人もいたという。洗口液では歯磨きの代わりにはならないと説明し、「歯磨き粉がなくても歯を磨く事はとても大事。できれば1日2回、朝と夜にして」と呼びかけた。 愛知県歯科医師会理事で防災対策担当の紀藤政司さん(66)も「災害時の口腔ケアは重要」と語る。被災者は水分の摂取を控えがちで、ストレスで唾液が少なくなり、口の中が乾燥しやすい。口の中に細菌が増え、食事の際に食べ物と一緒に気管に入ると誤嚥(ごえん)性肺炎を引き起こす。1995年の阪神大震災では、災害関連死の原因の4分の1は誤嚥性肺炎だったとされる。 とはいえ、被災地では断水が続くことも多い。水も歯ブラシもない場合は、ウエットティッシュやハンカチを指に巻き=写真、歯の汚れを拭くだけでも効果があるという。 歯ブラシはあるが、水が少ない場合は、コップに入れた水をブラシに付けて、歯を磨こう。汚れが付いたブラシはティッシュなどで拭き、また磨くことを繰り返し、仕上げに残った水でうがいを。これなら30ミリリットルの水でもできるといい、紀藤さんは「水を、2、3回に分けて口に入れ、うがいをするといい。仕上げに洗口液でうがいをすればより効果的」と助言する。 義歯を使う人は避難所では人前で外しづらいかもしれない。だが「外すのが嫌な気持ちはわかるが、細菌の増殖を防ぐため、食後に義歯をウエットティッシュで拭き取り、汚れがたまりやすい金属部分を綿棒で掃除するなどはしてほしい」と紀藤さん。できれば睡眠中は外し、水を入れた紙コップに浸すといいという。 唾液の減少には、唾液腺マッサージが効くため、図のような方法で取り組みたい。日本歯科医師会は、災害時の歯磨きの方法や唾液腺マッサージの方法の動画を公開している。(青山尚樹、佐橋大)
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