体調の悪い避難者を金沢へと搬送するDMATのメンバー=4日、石川県穴水町で(中部国際医療センター提供)

 能登半島地震では、今も1万5千人以上が避難所に身を寄せている。疲れが出ている被災者に対し、医療者らは感染症対策を訴えるとともに「心身に異変を感じた時は周りを頼って」と呼びかけている。 (植木創太、河野紀子)  避難生活が長くなる中、冬場に特に気を付けたいのは感染症だ。高齢者や持病のある人は重症化して命を落とす恐れもある。  石川県によると、災害派遣医療チーム「DMAT」が避難所などで診察したインフルエンザや新型コロナなどの「急性呼吸器感染症」の患者は、分かっているだけで119人(16日時点)。ノロウイルスなどが疑われる「消化器系感染症」の患者は29人(同)いた。  避難所では、小まめな手洗いや換気はしづらい。「あえて優先するなら手指消毒。できる範囲で手をきれいに保って」。そう話すのは、感染制御の専門資格を持ち、DMATの一員として能登半島へ入った中部国際医療センター(岐阜県美濃加茂市)の山田実貴人副病院長(53)だ。  具体的には、流水での手洗いが難しいなら、水でぬらしたティッシュなどで入念に手を拭くだけでもいい。食事前やトイレ後、炊き出し時などを優先させたい。アルコールの手指消毒剤は有効だが、ノロウイルスには効果が薄いので注意。消化器症状のある人の周囲や嘔吐(おうと)物の消毒には、塩素系漂白剤を数十倍に薄めて使おう。  トイレを使う時は、生活空間に菌やウイルスを持ち込まないよう、靴を履き替えたい。歯磨きできない場合は、水分補給の時に水をそのまま飲まず、口の中をゆすいでから飲み込み、汚れを取る意識を持つことで肺炎の防止につながる。  マスクが十分なら全員で着けたいが、不足しているなら症状がある人へ。部屋数があるなら、症状がある人は隔離して感染拡大を防ぎたい。山田さんは「物資の支援にはむらもある。それぞれの状況でできる範囲の対策を」と話す。  低体温による免疫力の低下にも注意が必要だ。  信州大地域防災減災センター副センター長で、付属病院の高度救命救急センター長も兼ねる今村浩さん(61)は「基礎代謝の低い高齢者は体温を奪われやすい。体温が下がると、ウイルスや細菌への抵抗力が低下して感染症にかかりやすくなる」と指摘する。  体温低下を防ぐには、重ね着やカイロなどで体を温める対策が有効だ。手足から冷えやすいため、厚めの靴下や手袋を使おう。しっかり食事を取り、糖分を含んだ温かい飲み物を飲むことも効果的だという。  一般社団法人避難所・避難生活学会常任理事の根本昌宏・日本赤十字北海道看護大教授(53)は「せきや熱など体調で少しでも異変を感じたら、遠慮せずに医療者に伝えてほしい。頼れる人には頼り、不安やつらい気持ちを吐き出すことも大事。1人で抱え込まないで」と呼びかけた。


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