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今回は浦添市で「いつ行っても開いている」と噂のパン店が長年愛されるワケを取材したー

いつ行っても開いているあの店… 取材してみると

浦添市に住む上江洲記者は、浦添市のパン店「ヒロシ屋」が気になっていた。浦添市民の間で、「いつ行っても開いてる」と噂の店だったからだ。

今回取材してみると、なんと24時間、店を開けていることが分かった。「ヒロシ屋」が24時間営業のパン店になったワケを聞くと、そこには店主の優しさがあった。

▽上江洲まりの記者
「すっかり夜も更けてきました。外は真っ暗ですが、こちらの店からはあまいパンの香りが漂ってきます。どんな店なんでしょうか。行ってみたいと思います!」

浦添市で35年続くパンの店、「ヒロシ屋」。大人気商品の「ナポリ」などをはじめ、約60種類のパンが、長年ファンを虜にしている。

一見、普通の街のパン屋だが…

▽店主・沼野明美さん
「どうせ来てもらうなら、同じ24時間だったら明るくいてほしいんですよ。楽しく」

パンを買い求めるお客さんのため、24時間 ”閉められない” というのだ。

▽仕事帰りの女性
「夜ずっと開いてるんで、パン食べたいときはここに来ます!」

ーよく来るんですか?
「そうです。仕事帰りに開いてるので、明日のパンみたいな、朝ごはんみたいな感じで買いに来てます」

▽塾帰りの女子高校生3人組
「塾の合間とかに食べてるんですけど… 糖分補給にめっちゃいいです。おすすめです!」

学校給食のパン職人だった「亀島ウト」さんが店の起源

明美さん家族が営む店の歴史は戦後の沖縄に遡る。戦後アメリカ統治下の沖縄。学校給食にはコッペパンが並んだ。明美さんの祖母、亀島ウトさんはこうした給食用のパンを作る職人だった。

ウトさんの子孫は県内に広がり、那覇市を中心に6店舗を展開する亀島パン、浦添のベーカリーソレイユなど… 数々の人気店が生まれた。

那覇市内を中心に県内6店舗展開する「かめしまパン」は明美さんのいとこや親戚が、浦添の人気パン屋「ベーカリーソレイユ」は明美さんの姉が営む店だという。

「ヒロシ屋」はトヨさんの息子・弘さんが平成元年にオープン。弘さんが病に倒れ、娘の明美さん夫婦がその看板を継いだ店だ。

▽店主・沼野明美さん
「ばあちゃんから始まって、この味をお父さん、私たちと3世代に渡っているんですけど、この味をずっと続けていきたい、守っていきたいので頑張ってます」

ヒロシ屋の1日を見てみると…早朝は、朝食を買い求めるタクシーの運転手。日中は常連の人が中心で、夜になると塾の合間に夜食を買いに来る学生たちが訪れる。

それぞれの時間にニーズが生まれ、いつしか24時間閉められないパン店として、地域を見守る存在にもなっていった。

▽店主・沼野明美さん
「夜中も来てくれて、気を付けて帰ってね、とかちょっと声かけて、母親の気分なんです。どこかに灯りついてるって、暗い中で、ちょっとほっとするじゃないですか。子どもたちの塾の帰りでもそうですけど、電気がついているだけでほっとするというか、何かあった時に逃げてこられるというか」

「ヒロシ屋」の営業時間が長い理由はもうひとつ…

明美さんは、市内の老人ホームに17年間、朝食のパンを届け続けている。

▽パンを食べる施設利用者
「は~いありがと~!よっしゃ!おいしい!」
▽店主・沼野明美さん
「ホームにいたら、ご飯って絶対楽しみのひとつなんですよ。おじいちゃんおばあちゃんにとって。だったらその日焼いたもので、温かくて柔らかいパンを食べて頂きたくて。夜の11時から主人に仕込みしてもらって、その日焼いたパンをその日に届けて朝ごはんに間に合うように、朝6時までに配達してます」

”24時間閉められない” 裏には、パンの味、そして明美さんたちの人柄…様々な理由で訪れる沢山の客の姿があった。

▽お客さん
「頑張ってな」
「ありがとうございました~」

浦添市で30年以上愛されるパンの店。パンを通して町を明るく照らす、地域に欠かせない存在だった。

(取材後記)
「ヒロシ屋」では、祖母の亀島ウトさんから受け継がれた配合の小麦粉を今でも使っている。また小麦粉などを一族の店でまとめて発注するため、物価高騰などの波を受けても、パンを値上げせずに済むといった、パン一族ならではの利点もあるという。それぞれのお店には同じメニューもあるが、作る人の違いで味は変わるということで、パン好きなら食べ比べてみて違いを楽しんでみてもいいかもしれない。(取材:上江洲まりの)

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