子どもからお年寄りまで幅広い世代に人気の魚「サーモン」。外国産が主流の中で、大分県の湯布院産サーモンの生産が拡大し、以前より市場に出回るようになっています。その理由を取材しました。

養魚場跡地を活用

井口記者:
「大分市のスーパーの鮮魚コーナーです。サーモンがずらりと並ぶ中で湯布院産のサーモンが販売されています」

大分市のトキハインダストリーあけのアクロスタウンの鮮魚コーナーでは、「おおいたサーモン」が販売されています。サーモンといえば外国産が主流ですが、この商品はなんと「湯布院産」です。

――サーモンというとどこのイメージがあります?
(買い物客)「ノルウェー産ですよね」

――ご存じでした?
(買い物客)「知らないです。色もきれいだし、湯布院はおいしいものを作ってそうなイメージがありますよね」

トキハインダストリーあけのアクロスタウン店 阿部武司チーフ:
「大分で養殖されているというのを知らないお客様がいられるので、やっぱりびっくりされる方がいる」

湯布院産サーモンを手がけているのは宮崎県の井戸内養魚場。九州各地でサーモン養殖に乗り出す中、湯布院では養魚場の跡地を活用し、5年ほど前からサーモンを育てています。

濱砂慎吾専務

濱砂慎吾専務:
「ここはもともと養魚場跡地で、海外のトラウトサーモンを養殖している。海でも航海できる品種です。いま銀毛(ぎんけ)していて、海に行けますよという合図です」

養殖期間3年→半分に

育てているのは、アメリカ産のトラウトサーモン=ニジマスです。海で養殖すれば成長速度が早まりますが、海水温が高い九州の海では難しいため、時間がかかるものの、淡水での養殖を採用しています。

ただ、ここ湯布院では、通常3年ほどかかる養殖期間を半分に抑えることができるといいます。

濱砂慎吾専務:
「この湧き水はいくら台風で雨が降ろうが何をしようが、濁ることもなければ水温が変わることがないので、魚の養殖としては非常に助かっている水」

年間を通して水温が一定の「湧き水」を利用することで安定生産が可能に。5年前には年間10トン程度だった湯布院サーモンの出荷量は100トンにまで増えています。

濱砂慎吾専務:
「魚のおいしさは、魚種と環境、食べているもの、この3つがポイントです。皆さんに美味しいと言ってもらえるように、ある程度基準を上げた良い魚を作っていきたい」

湯布院の新たな名物に

湯布院産サーモンの認知度は高まりつつあります。JR由布院駅前に去年5月にオープンした飲食店「ゆるりん」では、メニューの主役に置き、国内外から訪れる観光客に提供しています。

ゆるりん 立川智大オーナー:
「湯布院の食材を使ったもので商売を始めたくて、韓国や中国でもサーモンが好きな人がすごく多いので、湯布院でも絶対に流行ると思った。認知度はちょっとずつですが、上がっていると思う」

サーモン丼

おすすめは養魚場から直送される朝締めのサーモンを使用した「サーモン丼」(1500円)。客の半数以上が注文するという人気メニューです。

井口記者:
「脂の乗りがちょうどいいですね。淡水魚の臭みは感じられません。子どもも食べやすいと思う」

サーモンレアカツ

ゆるりん 立川智大オーナー
「養魚場から直で朝届けてもらい、そこでさばくので一番の魅力は新鮮さ。サーモンを苦手な方でも食べられると言っていただける方が多い」

一方、半年ほど前から取り扱いを始めたトキハインダストリーでも徐々に認知度が高まっているといいます。ここでも魅力は「鮮度」。サーモンの活き締めは珍しいそうです。

トキハインダストリーあけのアクロスタウン店 阿部武司チーフ:
「鮮度が一番ですのでコリコリとした食感が売りとなっています。なかなか活き締めのサーモンというのは入らないのでリピーターもどんどん増えている状態」

湯布院の豊かな恵みで育まれたご当地サーモン。輸入が主流のサーモン市場で鮮度を最大の武器として着実に需要を増やしています。

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