学校生活の中で楽しい時間は給食…。誰もが思いがちですが、この給食を苦痛だと感じている子どもたちがいます。給食が怖い…。きっかけは先生の何気ない声かけや指導でした。

給食が原因で学校に行きづらくなる子どもたちがいます。

富山市のこうたろうくんは中学1年生。小学校1年生の途中から給食の時間が怖いと感じるようになりました。

こうたろうくん:「給食が始まる10分ほど前から、受け付けない。ドキドキもするし、食べたいとそこまで思わない」

きっかけは「給食を残さない」という先生の指導でした。

こうたろうくん:「残さず食べないといけないかなっていうプレッシャー。残したらダメみたいな感じの先生だったから、それを人のを見て、怖くなったっていうか、気が重くなったっていうか」「何か頑張りなさいって言って、教室の掃除してるときも後ろで食べてた記憶がありますね」

そんな重苦しい学校生活が続き、2年生になったこうたろうくんは、給食が始まる前に帰宅するようになりました。母親の里奈さんは、当時の様子をこう語ります。

母親 里奈さん「給食当番のお友達によそってもらった量がちょっと予想以上に多かったりとかして、でも何か減らしてくださいとかあんまり言えなかったりとか。やっぱり先生が何かもうちょっと頑張ろうかとかって多分言ってて、先生自身に悪気とかは全然ないと思うんですけど多分それが本人にはちょっとプレッシャーになってしまったんだろうと思います」

子どもたちを励まそうと思ってかけた何気ない先生の言葉が、こうたろうくんにとっては重圧になっていたのかもしれないと里奈さんは振り返ります。

「ペロッとしてみたら」との声かけ…

教育者向けに給食指導の資料を提供しているきゅうけんによりますと、学校給食に苦手意識を感じている人の理由として「嫌いなものがある」「量が多い」「時間が短い」などが多くあがりました。

また「担任の先生がどんな指導をするのか」で、給食が嫌に感じるかどうかが大きく変わるという声もありました。

きゅうけんの編集長山口健太さんは、食べられない子どもに対して声掛けの工夫が必要だと話します。

『きゅうけん|月刊給食指導研修資料』編集長
山口健太さん「一口食べてみたら?みたいな感じでよく進めることが多いと思いますが、その進め方をもう少しハードルを低くしてあげる」「ちょっとペロッと舐めてみるぐらいだったら、咀嚼したり嚥下したりということをしなくても、自分の中で食べるかどうかっていうのを確認することができるので、一口食べてみたらというのを、ちょっとペロッとしてみたらっていう声掛けに変えるだけで、今までより食べるようになるっていう事例はありますね」

食べられる量に調整する時間が設定された…

1990年代まで学校現場では給食は残さず食べるという「完食指導」が行われていましたが…。

【相ノ木小学校】近年では「学校給食を無理に食べさせない」という指導に変わりつつあります。

12時の時報「キンコンカンコン」

上市町にある相ノ木小学校。4時間目の授業終了とともに待ちに待った給食の時間がやってきました。

パリオリンピックの開幕が迫ってきたこの日は特別給食。開催国のフランスを意識してブイヤベースにチーズコロッケ、コールスローサラダなどが用意されました。

「手を合わせましょう!いただきます」

“いただきます”のあいさつのあと、担任の先生が

1年生担任 松田立樹教諭「減らす人持ってきてください。野菜減らす人~?」

この小学校では、配膳された分量が多いと感じたり食べられない食材があったりすると、自分が食べられる量に調整する時間が設けられています。

児童「きらいなものある?」「炭水化物みたいなもの。最初から少なくなっているときは減らさない」

1年生担任 松田立樹教諭「たくさん食べられる子もいれば、あまり食べられない子もいるので、4月から少しずつ調節するようには、指導していたので、自分たちで食べられる量を少しずつ分かってきているのかなって」

教員歴35年の草野剛校長は2010年ごろから、完食指導から個性を大事にするように給食の時間も徐々に変わっていったといいます。

相ノ木小学校 草野剛校長「全然食べないわけじゃなくて、ちょっとは苦手なものも食べましょうって。でも、たくさん食べられないのもその子の個性じゃないかっていうようなことが言われ始めた頃から全員で完食指導っていうのはちょっとずつ少なくなっていったんじゃないかなっていうのは思いますね」

この春に中学生になったこうたろうくんですが、今も給食が食べられない日々は続いています。

周りの人にどこまで理解してもらえるのか…

給食が食べられなくなったことをきっかけに、誰かと一緒に食事をすることに強い不安や緊張を感じる会食恐怖症になっていったといいます。

母親 里奈さん「食べられるようになる薬っていうのはやっぱりないので、そうやって話し合ったりとかして、何か生活の中で工夫しながら、ここまで来たかな」「やっぱり何かお付き合いとかで食べたり飲んだりっていうことが増えたときに何か本人が大変なのかなって思うのと、そういうことをもしちゃんと言って、周りの方にどこまで理解してもらえるのかなっていうのは少し心配なところはありますね…」

こうたろうくん「友だちと遊びに行ったときにご飯どこで食べるってなったときに、いや、正直いらないけどなと思うときに、ごまかし方っていうの、何て言うのその人に対する話し方とかは困ったりはします」

こうたろうくん「ある程度外で食べるのが苦手なんだなっていうことをわかってもらえればいいかなとは思います」

楽しみなはずの給食を嫌いにならないために…。子どもたちの個性に合わせた指導と周囲の理解が求められています。

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