5区、積水化学の新谷仁美(左)を抜き返す日本郵政グループの鈴木亜由子=仙台市で2024年11月24日、新宮巳美撮影

全日本実業団対抗女子駅伝(クイーンズ駅伝、24日・松島町文化観光交流館前~弘進ゴムアスリートパーク仙台)

優勝=日本郵政グループ(2時間13分54秒)

 日本郵政グループと積水化学の手に汗握るデッドヒートは、最終6区の終盤まで続いた。残り1キロあまりで無我夢中にスパートして抜け出した太田琴菜が右腕を突き上げながらトップでフィニッシュすると歓喜の輪が広がった。

 創部翌年からクイーンズ駅伝10年連続出場で、4回目の女王の座をつかんだ。太田は「自分一人のレースだったら、ここまでの力は出せなかった。これが『駅伝』」と満面の笑みを浮かべた。

 絶対的な優勝候補と見られていた積水化学との勝負を分けたのは、高橋昌彦監督が勝負どころと見定めて後半5区に起用した大黒柱・鈴木亜由子の驚異の粘りだった。

 22秒のリードを得て、トップでたすきを受けたが、積水化学のエース新谷仁美に猛追され、中盤手前で追いつかれた。しかし、そこからが真骨頂だ。時折厳しい顔つきを見せるも、リズミカルな足取りを保ったまま、新谷の後ろにピタリとついて約5キロ走った。終盤で逆に鈴木がスパートを仕掛けた。新谷も必死に追いついてきたが、ラストでさらにギアを上げ、新谷に1秒先着した。鈴木は「絶対負けられないという意地があった」と胸を張った。

 33歳の鈴木は唯一、2014年の創部当時からのメンバーで、初代主将でもある。オリンピックや世界選手権などの国際大会に出場しながら、10年連続でクイーンズ駅伝を走ってきたチームの象徴だ。実直にトレーニングやケアをこなす姿勢は、後輩たちの手本になってきた。6区の太田は「亜由子さんがものすごい勢いで走ってくる姿を見て、2位では帰れないと思った」と感謝した。

 一人で駅伝は勝てない。鈴木の走りを引き出したのは、1~4区の選手たちだ。若手の1区・菅田雅香と2区・牛佳慧、故障明けで今季初レースとなったエースの広中璃梨佳、新人で4区のカリバ・カロラインがいずれも区間3位以内の走りで踏ん張り、先頭が見える位置でたすきをつなぐ、「駅伝の鉄則」を守った。高橋監督は「120点の見事なレース」とたたえた。

 日本郵政は、16年大会以降、常に上位に入ってきたチームだ。鈴木の背中を追い、個々が各区間で役割を果たすという「伝統」が創部11年目で作り上げられた。

 4回の優勝を知る鈴木は「(16年の)最初の優勝は勢いだったが、今回の優勝はチームの成熟度が高く、チームとしての団結力もある」と語る。これまで4回以上の優勝を記録したチームは、7回の三井住友海上、5回のワコール、4回の京セラに続いて4チーム目。一時代を築いたチームとして歴史に名を刻んだ。【磯貝映奈】

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