【仙台市(JR東日本東北)-大垣市(西濃運輸)】投球する仙台市の先発・小島康明=東京ドームで2024年7月29日、新宮巳美撮影

 第95回都市対抗野球大会で初の決勝進出を果たした仙台市・JR東日本東北では、東北愛あふれるベテランの力投が光った。「打てそうで打てない投手」、TDKから補強の小島(おじま)康明投手だ。

 32歳の誕生日だった20日の広島市・JR西日本との1回戦。「さすがに力んでしまった」と初回にソロ本塁打を浴びたが、その後は落ち着いた投球で6回2失点と先発の役割を果たした。25日の君津市・日本製鉄かずさマジックとの2回戦は六回途中1失点、29日の大垣市・西濃運輸との準決勝は6回2失点。「2戦目以降は力むことなく楽しめている。(準決勝は)未知の世界だったが、きついながらも楽しく投げられたかな」と振り返る。

 東北での生活は10年目を迎えた。東京農大から進んだ、きらやか銀行(山形市)では2016年に山形県勢66年ぶりの都市対抗出場に貢献。同行の業績悪化で22年9月に野球部が無期限休部となると、関東を含む複数のチームから声がかかる中、TDK(秋田県にかほ市)への移籍を決めた。

 「入社した頃から東北のチームはレベルが低いと見られがちなのが本当に悔しくて。東北のチームで(社会人野球の)2大ドームを勝ち上がって東北の社会人野球を盛り上げたかった」

 茨城県出身だが、「第二の地元」という東北への愛着が生んだ決断だった。

 自身6回目の都市対抗となった今大会で披露した安定感のある投球。そのヒントは、22年にTDKの補強選手として出場した第93回大会にあった。

 「東京ドームに表示されたモニターを見て、初めて自分のボールの回転数が多いことに気づいた。回転数が多くて伸びると高めのまっすぐで空振りを取りやすいというデータがある。高めのまっすぐを(配球に)組み込むことで、変化球をより有効に使えるようになった」

 球速は140キロに届かないが、約2600回転と高い回転数を誇る伸びやかな直球、決め球のチェンジアップのコンビネーションで、自身の目指す「打てそうで打てない投手」に近づいてきている。

 マウンドでは闘志をあらわにするが、普段の性格は控えめ。「自分から特にアドバイスすることはない」というが、仙台市の投手陣は「変化球の握り方など毎日のようにいろんなことを聞いてきてくれる」とうれしそうに話す。若手が登板する際は「僕も何度立っても都市対抗のマウンドは緊張する。とにかく楽しんできて」と送り出してきた。

 そんな頼れる存在が、躍進を支えた。【磯貝映奈】

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