30日に東京ドームで行われた第95回都市対抗野球大会の決勝は、初優勝を目指すチーム同士の対決となった。歴史的瞬間を見守ろうとスタンドに駆け付けた人たちには、グラウンドの選手らに特別な思いを託す人もいた。
「混成部隊」が結束力を追求し、ついに高みへ――。チームの再編統合による発足から4年目を迎えた三菱重工East(横浜市)。その歩みを知る野球部前主将、平野智基さん(32)の姿がスタンドにあった。
平野さんは2023年限りで現役を引退。この日は社員として応援に訪れた。チームについて「個人の力はもちろん、戦い方もレベルアップした。なにより、どんな場面でも落ち着きが見て取れる。練習が自信につながっているのだろう」と話す。
三菱重工Eastは21年に発足した。三菱重工の野球部はそれまで全国4チーム体制だったが、「East」と「West」(神戸市・兵庫県高砂市)に再編。名古屋市と広島市に拠点があった2チームの選手たちが横浜にも移籍してきた。だが、当初は勝てずに苦しんだといい、平野さんは「まずは互いを知る必要があった」と振り返る。
それでも当時の主将、江越海地選手(29)が結束を呼び掛け、1年目の日本選手権で準優勝した。混成部隊だからこそ、チーム作りはまとまりを重視する――。その雰囲気は、翌季から2年間主将を務めた平野さんを含め、歴代主将を通じて醸成されていった。
ただし、都市対抗では勝ち進めず、前回出場の23年はベスト8止まりだった。昨シーズン終了後、平野さんは自ら現役引退を決断し、主将を受け継いだ矢野幸耶選手(30)らに悲願の初優勝を託した。
平野さんは現在、経営企画部に所属し、働きやすい環境づくりに取り組む。同じ部署には矢野主将らがいて、野球部を全力で応援してきた。今大会は決勝までの全5試合に足を運んだ。初の決勝に臨む選手たちへ「慌てず、みんなが自分の力を出してほしい。自信を持ってやれば、おのずと結果はついてくる」と声援を送った。【岡正勝】
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