(29日、第106回全国高校野球選手権岡山大会決勝 岡山学芸館4―3関西)

 1点リードで迎えた九回裏、岡山学芸館の2番手として丹羽知則がマウンドに上がった。

 直前の攻撃で打線は三者三振に抑えられた。相手の押せ押せムードはマウンドでもひしひしと感じていた。それでも動じなかった。

 「ピンチの時こそ、ノリノリで」

 大会直前、5歳上の兄・純平さんから送られた言葉だ。普段はあまり連絡を取らないが、最後の夏は頻繁に助言をくれた。

 その言葉通り、2死を取る頃には相手の応援に体でリズムを取る余裕も生まれた。最後は直球で二ゴロに抑え、学校として5年ぶりの甲子園出場を決めた。

 「じゅん」と慕う兄は岡山学芸館の先輩でもある。5番打者で、左腕としてマウンドにも上がり、第101回全国選手権大会に出場した。

 初戦の2回戦で顔面に打球を受けて降板。左ほおを骨折したが、3回戦も先発マウンドに上がった。

 兄は左投げ、自分は右投げで技術面ではあまり参考にできないが、投手の心構えは教わった。憧れの兄の背中を追いかけ、岡山学芸館に入学した。

 昨秋は同学年のエース沖田幸大に頼りっぱなしだったが、冬場のトレーニングをへて、丹羽も成長した。130キロ前後だった球速も、最速140キロまで上がった。

 岡山大会は沖田と3試合ずつ交互に先発した。丹羽は計20回と3分の2を投げ、わずか1失点。沖田とともに投手陣を引っ張った。

 最後の夏に、兄と同じ甲子園の舞台に立つ。次なる目標は兄ができなかった8強入りを果たすこと。「兄の成績を超えたい」。メラメラと闘志を燃やす中で、決めていることがある。

 「甲子園は一番楽しい舞台だと思う。マウンドでもノリノリでいきたい」=倉敷マスカット(大坂尚子)

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