(23日、第106回全国高校野球選手権岐阜大会準々決勝、岐阜城北6―5大垣日大) 九回、大垣日大のエース・権田結輝投手(3年)は追い詰められていた。岐阜城北に2死から同点に追いつかれ、続くピンチ。最後は青木琉生選手(同)に左翼線へサヨナラ適時打を浴び、優勝候補の一角の準々決勝敗退が決まった。

 体調が万全ではなかった。腰に痛みがあった。それでも「この仲間と野球ができるのなら、最後まで投げ切ろう」。

 昨夏の甲子園も経験している右腕は、落ち着いたマウンドさばきで六回を2失点にまとめる。「後は任せたぞ」。継投の杉山梨久斗投手(同)に声をかけ、七回に一塁手の守備に回った。

 だが杉山投手は連打で失点。急きょ再びマウンドへ。「ごめん」と謝る杉山投手に、権田投手は「杉山のためにも執念で投げてやろう」と気合を入れ直す。後続を断ってピンチを脱した。

 昨年退任した阪口慶三前監督(現・関商工特別顧問)の後を受けた高橋正明監督は「権田には意地とプライドがある。やっぱり権田しかいない。託しました」。

 だが回を追うごとに岐阜城北の打者たちのスイングは鋭さを増していく。最後は「球に魂を込め、気持ちで投げていました」。そんな権田投手の153球の力投は実らなかった。

 再び聖地に行く目標はかなわなかった。「大垣日大のエースとして恥じない投球をしたかったんですが…。みんなを甲子園に連れて行けなかった。後輩たちには行ってもらいたいです」と声を絞り出した。(高原敦)

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