4点リードの六回。先頭打者に内野安打を許すと、無死満塁のピンチを招いた。マウンドで深呼吸をして、インコースに投げたはずの直球は、打者に当たってしまった。押し出し死球。交代を告げられ、ベンチで唇をかんだ。「もっと完璧なコースに投げ切れていれば」。救援陣も制球が乱れ、この回に逆転された。  昨夏、チームは決勝に進出した。だが九回2死から逆転され、甲子園への切符を逃した。自身も九回に登板し、打たれた。「自分が踏ん張れていれば…」。やりきれなさが募った。だからこそ今夏は「絶対にやり切って終える」と誓い、練習を重ねた。だが、また踏ん張れなかった。  試合後、少しだけ泣いた。だがほかの仲間たちのように号泣はしなかった。「やり切れなかったし、悔いが残ってる」。2年分の悔しさは、野球を続けて晴らすと決意した。


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