第106回全国高校野球選手権神奈川大会は23日、横浜市の横浜スタジアムで準決勝2試合を行い、横浜が武相に2-1でサヨナラ勝ち、東海大相模が向上に6-4で競り勝った。4大会連続34度目の横浜と、2大会ぶり21度目の東海大相模による決勝は24日午後2時から同所で。2022年の第104回大会と同じ顔合わせとなった。

9回裏横浜、サヨナラ打で生還する峯選手(中)と喜ぶ横浜ナイン=いずれも横浜スタジアムで

 横浜は1-1で迎えた九回、2死無走者から満塁とし、2番奥村凌大(りょうた)選手が左前に運んで試合を決めた。武相は二回に1点を先制したが、五回に追いつかれた。打線も3安打に抑え込まれた。

8回裏東海大相模、適時二塁打で生還し、和田選手(8)とタッチをする木村選手(右)

 東海大相模は1点を追う八回1死満塁から6番才田和空(わく)選手がレフトに走者一掃の二塁打を放ち、そのまま逃げ切った。向上は五回と八回にそれぞれ1点リードの展開に持ち込んだが、全国大会常連の猛打に逆転を許した。  神奈川大会で横浜と東海大相模が夏の甲子園の切符を争うのは9回目で、これまでの対戦成績は4勝4敗。

◆向上 「あの1球が」悔やむエース

先発した向上・百瀬投手

 序盤に2点を先制されても、相手の強力打線に「点を取られるのは想定していた」。向上の先発、百瀬匠投手(3年)は五回、打撃でも先頭で中前打を放ち逆転につなげた。しかしその裏、「打者が好きな、飛んでいきやすいところ」に甘く入ってしまった直球が本塁打に。すぐに同点に追い付かれ、五回でマウンドを降り、次の投手に託した。  「点を取って良い流れだったのに、あの1球が悔しい。チームに流れを持ってくる投球ができなくて、申し訳ない気持ちでいっぱい」。目の前の1人との勝負だけを考え投げ続けたが「相手の技術がすごく上で、高さが甘くなってしまうと全部長打に持っていかれて。本当に悔しい」と振り返った。  行けるところまで投げ、つなげる継投策がチームの特徴。背番号1だが「マウンドに上がっている投手がエース」と引き継いだ仲間を信じた。逆転された八回、マウンドに向かい、4人目の大森逢沙斗投手(3年)らメンバーに「まだまだ試合は終わっていないから思い切っていけ」と激励した。  一時は逆転、勝ち越しの場面もあり、初めての甲子園が近づいたかに見えた。「勝てる、と思ってしまったのが…緩みではないんですけど、甘かったかな」。それでも平田隆康監督は「選手たちは食らいついて、やってきたことを出そうという気持ちが伝わってきた。悪かったところは無かった」とたたえた。(神谷円香)

◆武相 「打倒エリート」まであと一歩

横浜に敗れ、グラウンドを引き揚げる武相ナイン

 同点の九回2死満塁。炎天下のマウンドに立ち続けた八木隼俊(はやと)投手(2年)の128球目が甘いコースに入った。はじき返された打球は左翼手の手前に落ち、サヨナラ負け。「勝負強さで差が出た」と八木投手。チームが掲げる「打倒エリート」まであと一歩だった。  全国屈指の強豪が集まる神奈川で、自分たちを「雑草」と呼ぶ。最後の夏の甲子園出場は半世紀以上前までさかのぼり、昨年の県大会は4回戦敗退だった。中学時代から名をはせたトップ層への反骨心をばねに技術だけでなく練習の準備、片付けなど精神面も磨き、春の県大会では42年ぶりに優勝した。  準決勝の大舞台で、春夏5回の全国制覇を経験する横浜にもひるまなかった。2年生エースから連打で先制。元プロ野球選手の息子も名を連ねる打線に八回まで9安打を浴びながら、好守備を重ねて八回まで最少失点にとどめた。ピンチに何度もマウンドに集まり「気持ちで負けるな」と声を掛け合った。  4年連続で決勝に進んだ名門を「何をやってもうまくいかなかった」(村田浩明監督)と言わせるほど追い詰めた。仲宗根琉空(りく)主将(3年)は「個じゃなくチーム一丸で戦えばここまでできるんだと、少しは表現できた」と誇った。(米田怜央、神谷円香)


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