(18日、第106回全国高校野球選手権千葉大会4回戦、市原中央8―1安房=7回コールド)
七回裏1死満塁。安房の福原塁(3年)は三塁に立っていた。自分の失策で出塁した走者が生還して同点になるなど、みんなに迷惑をかけたと感じていた。「自分がホームにかえるしかない」
代打の座間啓瑠(2年)の打球が外野に飛んだ。上空の白球の行方を追う間、セミの鳴き声もスタンドの応援も、三塁コーチの声も、何も聞こえない。「時が止まったように感じた」滞空時間の長い飛球は、中堅手のグラブに収まった。
1点追加できれば、コールド負けを延ばせる。三塁を蹴って無我夢中で走った。本塁に頭から滑り込んだ。セーフの感触はあった。ヘルメットが脱げ落ち、勢いのまま右に体が回転したとき。審判が拳をつくっているのが見えた。「自分のせいで、申し訳ない」
ただ仲間たちは、「勝負できて良かった」と声をかけてくれた。自分も、後悔していない。
「人生でもいざ勝負しないといけないときがあると思う」。そんなときに思い出せる。高校野球の3年間が詰まったタッチアップは、財産だと思っている。=大谷津(マハール有仁州)
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