(18日、第106回全国高校野球選手権埼玉大会3回戦 鷲宮14―0上尾橘・小川・桶川西)
1年前のリベンジは、仲間たちが実現してくれた。「今度は僕が打って後につなげる」
14点差を追う五回裏無死、代打に出た連合チームの薄井孝騎(3年、上尾橘)はそんな気持ちで打席に立った。今大会の初打席だったが、仲間の声援を背にストライクゾーンの球を思いきり振り切った。2球を空振りし、ファールで粘った後の6球目で空振り三振した。
昨夏の初戦は4校連合で大宮武蔵野に挑んだ。薄井は5番一塁で出場し、3安打2打点と活躍したが、16―15でサヨナラ負けした。悔しさだけが残った。
しかし、3年生2人が引退した上尾橘の野球部は自分1人。監督と一緒に打撃練習を重ねたが、暗くなったグラウンドに自分の声だけが響く光景に心が折れかけることもあった。そんな時は「来年こそは勝ち進む」と奮い立たせた。
6月、小川、桶川西と3校で連合を組むことが決まった。週末の合同練習は、本当に充実していた。試合中は励まし合い、練習後は趣味などたわいもない話に花を咲かせる。積極的に声をかけ、練習を重ねるごとに気まずさは消えた。守備の連携がうまくいった時は一つのチームになっていると感じた。
今大会、初戦は奇しくも大宮武蔵野。ただ、守備のミスが続いていたこともあり、「仲間を信頼して思いを託した」。チームは九回、小川の主将斉藤凜太郎(3年)のサヨナラ打で勝利。出場機会はなかったが、「これで明日も一緒に野球ができる」と喜び合った。
鷲宮戦は、コールド負けに終わった。1年間の練習の成果は形にできなかったが、それでも満足だった。「最高の夏になった」と笑ってみせた。(恒川隼)
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