(16日、第106回全国高校野球選手権千葉大会3回戦、光英VERITAS0―1東海大市原望洋=延長10回タイブレーク)

 好右腕同士の投手戦は、0―0のままタイブレークに突入した。

 光英VERITASは十回表、バントの失敗と併殺で無得点のままその裏の守備に入った。

 マウンドには、先発して無失点投球を続けていたエース、早川純暉(あつき)(3年)。先頭打者がバントをし、捕手がボール処理に手間取って無死満塁に。素手でボールを拭く捕手の森川嵩広(2年)に歩み寄って言った。「ゲッツー取っていこう」

 県内の複数の強豪校も、中学時代の早川に注目していた。だが、進んだのは光英VERITASだった。入部したときに野球部は創設2年目。新しいチームを引っ張っていきたいという思いからだった。

 主将として迎えた最後の夏。

 2球目、外角低めに投げた直球を二塁手方向に返された。球は右翼に抜けた。

 歓声をあげながらグラウンドに集まる東海大市原望洋の選手たちと、涙を浮かべながら整列に集まってくる光英VERITASの選手たち。そんな中、早川は終始穏やかな表情で立っていた。「やりきったな。楽しかったな」

 どんな時でも笑顔でいることがチームの方針だった。負けても「主将である自分だけは笑顔でいよう」と決めていた。

 引退してもチームの絆は終わらない。そう言い聞かせるように、チームを引っ張り上げた主将は、仲間たちと抱擁を交わした。(マハール有仁州)

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