(15日、第106回全国高校野球選手権香川大会2回戦、高松南4―1高松工芸)

 三回表、高松南の3番打者が放った飛球は、高松工芸の右翼手、中上尽心(じん)選手(3年)の前方へ落ちようとしていた。

 「ピッチャーが打たせた球。なんとしても捕るぞ」

 手を伸ばしてダイビングし、球はグラブの中に収まった。

 先制を許していた高松南の走者を得点圏に進ませなかった。

 決して得意ではなかったという守備で練習を重ねてきた成果が出た。

 相手エースを攻めあぐねて八回まで15三振を喫し、4点のリードを許して迎えた九回裏。2死二塁で中上選手に打順が回った。

 フルカウントからファウルで粘った後、低めの球に手を出してしまい、二ゴロに。しかし、必死で一塁に頭から滑り込んだ。

 「声援に応えたかった」

 敵失を誘い、二塁走者は生還。意地の1点をもぎ取った。

 その間に三塁まで進塁した中上選手は「良かった!ここからいくぞ!」という気持ちで、泥だらけのユニホームでガッツポーズを決めた。

 だが、後続が断たれ、最後の夏は終わった。

 1、2年の間に三度骨折するなど、苦しい時期も長かった。

 「けがが多くてやめようと思ったこともあったけど、このチームで野球ができてよかった」

 その顔は晴れやかだった。(木野村隆宏)

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