(11日、第106回全国高校野球選手権香川大会1回戦、笠田0―7小豆島中央)

 「練習しても仕方ない」

 笠田の秋山優輝主将(3年)は、1年の夏、野球部を退部した。

 小学2年から野球に打ち込んできたが、夏の大会後、3年生が引退して部員が10人以下となり、「闘志がなくなった」ためだ。

 たちまち生活が変わった。遅刻や欠席が増え、宿題など提出物を出さなくなった。「このまま落ちぶれてしまうだろうな」。学校に通う目的を失っていた。

 その年の冬のある日、土井由喜監督から電話が入った。「もう一回野球せんかい」。

 そのときは「考えてみます」と素っ気ない返事をしたが、誘いの電話は数日間に4回続いた。「高校野球は今しかできない。もう一度やってみよう」とグラウンドに戻った。

 笠田は2014年の夏の選手権香川大会で勝利して以降、公式戦で連敗が続いていた。

 農業実習などで部員全員が集まれない中、「夏の大会で一勝」を目標に据え、練習に打ち込んだ。

 5点を追う七回表、一死1塁の場面。「前に飛ばせばいい」という気持ちで打席に入り、初球を振り抜いた。

 打球は左中間に高く上がったが、失速し中飛に打ち取られた。試合は7回コールド負けだった。

 「監督がいなかったら、ぐれて学校もやめていたと思う」

 秋山主将は試合後、涙が止まらなかった。

 土井監督は今夏で退任する。(和田翔太)

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