2023年9月に全国知事会の会長に就任した宮城県の村井嘉浩知事。2024年は全国で議論を呼ぶ発言が続きました。

原則、毎週開かれている村井知事の定例会見。宮城県庁の記者会見室から、今年は全国に波紋が広がる発言が続きました。

まずは4月。毎年、各都道府県の持ち回りで開催されている国民スポーツ大会、通称・国スポを巡り大胆な提案が。

村井知事
「あくまでも私の個人的な考え方として、廃止も一つの考え方ではないかなと思っておりますが、何か聖域とかタブーとかいうのを抜きにして、全く白紙の状態で議論したほうがいいんじゃないかな」

理由としてまず挙げたのが各都道府県の財政的な負担が大きいこと。選手を派遣する側で約1億円、開催地では100億円にも上る費用が必要になる場合があるといいます。さらに…

村井知事
「小さな都道府県は非常に選手を出しづらい。その中で順位を競って本当に意味があるのかどうか」

他県の知事もこれに反応。

宮崎県 河野俊嗣知事
「これはおそらく議論喚起をするために高めの強いボールを投げられたという印象は受けます。今までと同じようなやり方でいいのかはしっかり議論する必要があろうと考えています」

国スポを主催する日本スポーツ協会は9月に有識者会議を立ち上げました。会議には知事会も参加し、存続を前提として国スポのあり方、改革案について意見が交わされています。

6月には、驚きの構想が飛び出しました。

村井知事
「宮城県の近くでイセエビが捕れるんですよ、最近。つまり、かつての三重県の海水温に近づいてきているということですよね。宮城で真珠の養殖といったようなことも、5年後10年後を考えてチャレンジしていくべきじゃないのかなということを指示をいたしました」

真珠の養殖は、三重県をはじめ比較的海水温が高い地域で行われています。真珠を生み出すアコヤガイは水温が10度を下回ると死滅するとされているため、宮城県での真珠養殖はこれまでの常識では考えられないことです。しかし、県のデータによりますと、宮城県沖の海水温はここ数年で大きく上昇。2024年や2023年はこれまでの10年平均と比べ、5度前後高くなっているのです。

村井知事
「イセエビが捕れ出しているんですから、伊勢でやっていたことをやるということは非常に理にかなっているのではないかなと思うんですよ。できるような気がしますけれどもね」

構想表明から県の動きは早く、9月の県議会に養殖業支援費などとして3千万円余りの補正予算案を提出し可決されました。10月には県の担当者が神奈川県の三浦半島を訪れ、真珠の養殖を視察。アコヤガイの「核入れ」も体験しました。

県水産業基盤整備課 藤岡博哉技師
「体験させていただいたんですが、非常に難しいという印象を受けました。アコヤガイはそもそも宮城県にいない貝なので、そもそもアコヤガイ養殖ができるのかという検討と、さらに、そこの核入れ作業などの工業化。工業面で作業工程などが宮城でできるのかというのを改めて検証していく必要があると感じました」

日本の真珠は世界的に評価が高く、去年の輸出額は456億円。県は年度内に三重県も視察し、実現に向けて研究も進める方針です。

県水産業基盤整備課 藤岡博哉技師
「高水温に伴う環境変動が目まぐるしい中、持続的で収益性が高く、創造的な養殖生産体制の確立を目指しておりますので、その中で真珠養殖にチャレンジする意義というのはここにあるのかなと考えておりました」

ある政策を巡って知事が語気を強めたのは11月のことです。

村井知事
「収入が増えれば、消費が回って税収が上がるといったような絵空事を言うのではなくて、現実に地に足がついた具体的な対策、方策というものを示した上で与党と話し合いをしていただきたい」

国民民主党が提案するいわゆる103万円の壁の引き上げです。知事はこれにより、県と市町村あわせて620億円ほどの減収になるとの見通しを示し、補填する財源や削減する予算などが明確にならない限り「賛成とは到底言えない」と述べました。

村井知事
「何を削ってどこから財源を生み出すのか、少なくとも私が総理なら首は縦に振らないです」

この発言を巡っては、国民民主党の玉木議員が「総務省が全国知事会に反対するよう工作している」と発言。知事会会長の村井知事がこれを否定し、後に、玉木議員が陳謝するという騒動も。全国知事会では政策の必要性には理解を示すものの、財政面の懸念が相次ぎ、村井知事は知事会としての意見を石破総理にも直接伝えました。

村井知事
「地方の財源に大きな穴が開いてしまっては意味がない。ぜひとも、恒久的な措置として行うならば、我々の財政措置も恒久的な措置としてしっかりと手当てをしていただかなければ困ります」

今年1年、時に波紋を広げた自身の発言について村井知事は…。

村井知事
「狙っているわけじゃない。狙って高い球を投げているわけじゃなくて、割と真ん中に投げているつもりなんですけどね。打ち頃の球を投げているつもりなんですけど」

一方、来年も「言うべきことは言う」との姿勢を示しました。

村井知事
「当然、何を言っても賛否両論。いろいろございますけれども、必要だと思うことはどんどん発信していきたいと思いますし、宮城県民のためと思うことは遠慮なく発信していきたいと思っています」

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