衆院予算委員会で答弁する石破茂首相=国会内で2024年12月10日午前9時4分、平田明浩撮影

 11月28日に臨時国会が召集され、論戦が続いている。10月の衆院選で与党過半数割れの大敗を喫し、少数与党となった石破茂首相の政権運営が注目されるが、毎日新聞が実施した11月の全国世論調査では、内閣支持率は31%と低迷。厳しい船出となった。ただ、衆院選の結果を受けて石破首相は「辞任すべきか」と尋ねると、「辞任する必要はない」が43%と「辞任すべきだ」(24%)を大きく上回った。これはなぜか。有権者の自由記述から理由を探った。

 調査は11月23、24日にスマートフォンを対象とした調査方式「dサーベイ」で実施した。NTTドコモのdポイントクラブ会員を対象としたアンケートサービスを使用し、全国の18歳以上約7000万人から調査対象者を無作為に抽出。1919人から有効回答を得た。「辞任すべきか」との問いに関しては「辞任すべきだ」「辞任する必要はない」「わからない」を選択肢から選んでもらったうえで、その理由を自由に書いてもらった。

 「辞任する必要はない」の理由で最も多かったのは「選挙の大敗は石破首相だけの責任ではない」というものだ。「自民党全体の責任であって、石破首相個人の責任ではないと思う」(50代男性)、「原因は安倍派や前政権にあると思う」(50代女性)、「裏金問題で支持が得られなかったのであり、安倍派の議員に出ていってもらってもよいくらい」(70代女性)などの意見が並び、「現在の内閣の下で起きた問題ではないから。しかし、同じ自民党としてきちんとした対応をするように望む」(70代女性)という注文もあった。

 調査では、10月の衆院選で「政治とカネ」を投票の判断材料にしたかを尋ねている。投票に行かなかった回答者もいるため、小選挙区の投票先を回答した人(「与党系候補者」は29%、「野党系候補者」は39%)に限った質問だったが、そのうちの54%が「判断材料にした」と答え、「材料にしなかった」(28%)を大きく上回った。また、石破首相が裏金事件の実態解明に取り組み続けるべきかとの質問でも「続けるべきだ」が全体の71%を占め、さらに「辞任する必要はない」との回答者に絞ると、79%と8ポイント高かった。投票行動や選挙結果と首相の責任論を分け、石破首相に対し裏金事件の解明を求める有権者の姿勢がうかがえる。

 ただ、最も気になるのは、石破首相は「辞任する必要はない」と答える一方で、内閣は「支持しない」と回答した層だろう。「辞任する必要はない」と回答した人のうち内閣支持層は約6割であり、約3割は内閣を「支持しない」と回答した人たちだ。なぜ「支持しない」のに「辞任する必要はない」のか。

 この層で最も目立ったのは「在任期間が短すぎて政策の成否が判断できない」(30代男性)という指摘だ。「まだ石破首相の働きぶりが分からない」(10代女性)、「何もしていないので、とりあえずやらせてみて様子を見たい」(40代男性)などの声が相次いだ。「(自民党を)石破さんの力で新しい政権政党に改革してほしい」(60代男性)という期待の一方で、「期待はできないが、今のところは静観」(70代女性)という書き込みも。石破首相の手腕を見極めたいという思いがあるようだ。

 石破政権は少数与党であり、野党の協力がなければ法案を通せない。調査では、この状況を「好ましいと思う」が全体の55%に上った。過半数を占めている結果だが、「支持しない」かつ石破首相は「辞任する必要はない」と回答した層に限ると、一気に74%にまで上昇する。10代の回答者(性別は答えない)は「選挙の結果、野党の圧力が高まったと感じ、まだ様子を見るべきだと思った」といい、20代女性は「今、辞任しても混乱を招くだけだから。この状況を踏まえた政権運営をしてほしい」と書き込んだ。内閣は不支持でも、野党の意見を聞きながら政権を運営していくことを期待する声は強い。

 一方、「辞任すべきだ」の理由は、「自分で決めた勝敗ラインを下回った。民意を考えてほしい」(40代男性)、「選挙で明らかに負けた」(30代男性)、「最高責任者として責任は取るべき」(40代女性)など、選挙の大敗の責任を取るべきだとの指摘が多数を占めた。「辞任すべきだ」との回答者に限っても、石破首相が裏金事件の実態解明の取り組みを「続けるべきだ」は72%を占め、与党の衆院過半数割れの状況については「好ましいと思う」が59%を占めている。

 石破首相が少数与党の下、支持率を回復させるには、裏金事件への対応と野党との丁寧な議論がカギになると言えるだろう。【野原大輔、大隈慎吾】

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