イニシアチブ制度の導入に向け、記者会見した市民グループ「INIT(国民発議プロジェクト)」のメンバーと、船田元・衆院議員(右から2人目)ら=東京都千代田区の参院議員会館で2024年12月5日午後2時18分、宮城裕也撮影

 選択的夫婦別姓、原発再稼働――。さまざまな政策課題について選挙以外でも国民の声を国政に届けようとする動きが進んでいる。国民投票で政策の賛否を表明したり国会に議論を促したりできる「イニシアチブ(国民発議)制度」だ。

 この制度の導入を目指す市民グループが5日、参院議員会館で記者会見を開き、選択的夫婦別姓や紙の保険証の廃止など六つのテーマについて賛否を問うオンラインの模擬投票を8~14日に実施すると発表した。

 国政に対する要望を国会に直接述べることができる請願の制度はあるが、請願書を提出しても委員会で採択されないこともある。デモや集会などで反対の声が上がっても、法案が国会の「数の論理」で通過することも少なくない。

 一方、地方自治体では、地方自治法に基づく直接請求に加え、住民投票も実施されることがある。こうした仕組みを国政にも反映しようと2年前から市民グループ「INIT(国民発議プロジェクト)」がイニシアチブ制度導入に向けた活動を始めた。

 市民グループが目指す制度の仕組みは、一定の署名を集めれば、国会の本会議や委員会の場で制度の請求人が議案を説明し、国会に議論するよう求めることができる。さらに多くの署名を集めれば、国会に発議するとともに国民投票を実施する――というものだ。イニシアチブ制度は、海外ではスイスやイタリアなどのほか、米国の多くの州で導入されているという。

 共同代表を務める水上貴央弁護士は会見で、10月の衆院選で自民党支持層も裏金問題を考慮して投票したことに触れ、「選挙だけで全ての民意を個別に反映するのは無理がある。個別テーマを議論してもらうために国民が直接声を上げられる仕組みは非常に重要だ」と強調した。イニシアチブ制度の導入に向け、超党派の議員連盟も近く設立され、議員提案による立法化を目指す。

 10月の衆院選では連立与党を構成する自民・公明両党の議席が過半数を割った。躍進した国民民主党がキャスチングボートを握り、看板政策の「年収103万円の壁」引き上げに向けた協議に自公両党が応じている。

 政治状況次第で野党の政策が検討される動きは見られるが、議連呼びかけ人の自民党の船田元(はじめ)衆院議員は「選挙で政党や候補者に投票すると、次の選挙まで国民の声を吸い上げる手段が代議制民主主義にはない。国民の意思を確かめ、行政に訴える直接民主主義を導入することが民主主義の成長や進化のためになる」と話した。

 オンラインの模擬投票は、市民グループの公式サイト(https://init-jp.info/)の特設ページから参加できる。年4回実施する予定で、第2回以降は「原発・エネルギー」「選挙、政党・議員と金」「自衛隊、安全保障、市民政治」をテーマに賛否を問う。【宮城裕也】

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