国会議事堂=平田明浩撮影

 衆院選の結果を受け、混迷の度を深める政治に対し、経済界からは「(過半数割れした与党は)結果を真摯(しんし)に受け止めるべきだ」「安定を取り戻し、政策議論を進めてほしい」といった要望が相次いだ。

 経済3団体は28日にそれぞれ談話を発表した。

経団連会長「国民が厳しい判断下した」

 経団連の十倉雅和会長は、「政治とカネ」を巡る問題について「国民が厳しい判断を下したと認識しており、真摯に受け止めるべきだ」と指摘。「自民党・公明党を中心とする安定的な政治の態勢を構築し、政策本位の政治が進められることを強く期待する」とした。

 政府が今後策定する「次期エネルギー基本計画」に向け、経団連は再生可能エネルギーとともに原子力を最大限活用する方針を計画に明記するよう提言している。十倉氏は談話の中で、こうしたエネルギー政策の推進や賃上げのモメンタム(勢い)の維持・強化に向けた環境整備などを重要課題と位置付け、「政治がリーダーシップを発揮し、迅速に取り組んでほしい」と訴えた。

日本商工会議所会頭「国民の信頼回復を」

 中小企業が多く加入する日本商工会議所の小林健会頭は「政治資金問題などに端を発した自民党への支持率低迷により、大変厳しい結果となった」と総括。「自民党は政治資金の透明性を高め、政策の実現を通じて国民の信頼を回復してほしい」とコメントした。

 さらに中小企業の強化と地域経済の再生・活性化を主要政策の柱に据えるよう要望。「今後は政局となるが、政治の安定なくして持続的な経済成長はあり得ない。連立与党の枠組みがいかなるものであれ、デフレからの完全脱却などに不退転の決意で臨むべきだ」と求めた。

経済同友会代表幹事「政治改革にまい進すべきだ」

 経済同友会の新浪剛史代表幹事も「国民の政治不信が深まり、払拭(ふっしょく)のための説明や取り組みが不十分だった。政治資金の問題を含めた政治改革にまい進すべきだ」と与党側に注文した。

 選挙期間中、各党が掲げた最低賃金(時給)を1500円に引き上げる政策を巡って「払わない経営者は失格だ」などと述べていた。談話で新浪氏は「少子高齢化や人手不足といった構造的問題を抱える中でも、恒常的に可処分所得を向上させるビジョンと実行」が必要と強調。「こうした課題への対処を遅滞させる余裕はない。緒に就いた転換を後戻りさせることのないよう、与野党問わず、現実を直視した議論を尽くし、政策を前に進めることを期待する」とした。

企業からも懸念の声

 企業からも政策論議の停滞を懸念する声が上がった。キリンホールディングス(HD)の南方健志社長は「与野党とも目先の政権の議論から脱して早期に安定した政策基盤を取り戻し、政策実行に集中していくべきだ」との談話を発表。大手メーカーの関係者は、経済・財政や外交、社会保障の諸課題への対処について「内向きになって政権を安定させようとしているうちに、どこかに漂流しているなんて事態にならないでほしい」と語った。

 政府は物価高対策の策定などを急ぐが、各党の選挙公約は低所得者向け給付金や消費税減税などばらつきがあり、政権の枠組みがどうなるかによって内容も左右されそうだ。セブン&アイHDの井阪隆一社長は「将来不安による生活防衛意識の高まりが懸念される中、持続的な経済成長を実現し、国民が豊かさを実感できるよう、安定した政権運営のもと官民一体で取り組んでほしい」とコメントした。【道永竜命】

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