厚生労働省の「人材開発支援助成金」に関する会計検査院の抽出調査で、助成を受けた企業が職業訓練の委託先から費用をキックバック(還流)されていた事例が83件判明した。最終的に訓練費用の全額を助成金でまかなっており、検査院は「費用の一部を国が助成するという制度の趣旨から見て不適切。キックバックがあるなら申請額をその分減額すべきだった」と指摘。9日、厚労省に改善を求めた。
厚労省は能力開発事業の一環として職業訓練を支援。企業が従業員のIT教育などを公的または民間の訓練実施機関に委託した場合、雇用保険料と国費を原資に費用の一部を助成している。
検査院は今回、2019~23年度にリスキリング(学び直し)支援などとして助成金が支給された計約7万件のうち、244件を調査。その結果、83件でキックバックが確認された。
83件中4件(助成額計239万円分)は名目上、訓練実施機関の業務に対する企業からの支援の報酬とされていたが、実態は無条件のキックバックだった。残りの79件(同1億495万円)は「感想文やアンケートの提出」といった企業の「役務」への対価。ただし、同一の役務でも金額は助成率によって異なり、企業の実費負担がゼロになるように調整されていた。
検査院は「『役務』の実態がなければ最大で全額返金する必要があるが、助成金要領に規定がなく、実態がある場合は一概に『返せ』とは言えない。明確化して要領に定めるべきだ」としている。
厚労省企業内人材開発支援室の担当者は「指摘を真摯(しんし)に受け止め、助成金の適切な支給に向けて対応していきたい」とコメントした。【渡辺暢】
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