iPS細胞などの幹細胞から、受精卵に似た細胞のかたまりや卵子、精子をつくる研究に対し、一般の人の8割近くが期待をしていることが内閣府の意識調査でわかった。その一方で、過半数の人が、研究に関して国がある程度厳しく規制することが望ましいという意見だった。

 皮膚や血液などの細胞からつくれるiPS細胞や、受精卵からつくるES細胞(胚(はい)性幹細胞)は、体の様々な細胞に変化する能力がある。これらの幹細胞から、ヒトではまだ卵子や精子をつくることはできていないが、受精卵を模した細胞のかたまり(胚モデル)とともに、この分野の研究は急速に進展している。

 ヒトの受精卵は研究で使うことが厳しく規制されているため、人為的につくった生殖細胞や胚モデルが得られれば、ごく初期の発生を調べる有力な手段になる。一方で、命の始まり方に関わる研究で倫理的な課題もあり、内閣府の生命倫理専門調査会では研究ルールに関して議論を進めており、民間の調査会社に委託して意識調査を実施した。

 調査は1月にインターネットを通じて行われ、医薬品産業や医療などには携わっていない20歳以上の計3095人が答えた。回答者には、研究についての簡潔な説明文を事前に読んでもらった。

 研究が進むことについて、18.6%が「強く期待する」、58.6%が「どちらかというと期待する」と回答し、合わせて77%に上った。「全く期待しない」は5.1%、「どちらかというと期待しない」は17.7%だった。

 期待する理由として、6割前後が、不妊症や生まれつきの病気の原因の解明と治療法の開発を挙げた。「発生や遺伝のメカニズムの解明」は4割、「子どもの欲しい人は誰でも遺伝的つながりのある子どもを持てる」は3割。「デザイナー・ベビー(親の望み通りの子ども)の誕生につながる」は4%だった。

 期待しない理由は「不自然で抵抗感がある」が6割で最多だった。

 一方、研究のあり方について尋ねると、「研究の実施要件などに、ある程度国が厳しく規制を行う」が55.2%、「そもそも研究は認めるべきではない」が15.2%で、国の関与を望む意見が大勢を占めた。「研究者に大きな裁量が与えられ、世界の最先端の研究を自由に行える」は29.6%だった。

 調査では、説明文の理解度が高いほど、期待が強い傾向があった。ただ、説明文が「よく理解できなかった」という人でも、「どちらかというと」も含めて「期待する」が7割に上った。

 このため、調査結果が報告された15日の会合では、委員からは「どの程度、理解して好意的な意見を出しているのかは慎重に見る必要がある。『8割の国民が支持』という表面的なところだけがメディアで流れるのは危険だ」とも指摘された。

 iPS細胞などから生殖細胞や胚モデルをつくる研究は発展途上だが、日本の研究者が世界をリードしてきた。ただ、卵子や精子が再現できても、日本では受精させることが国の指針で禁じられている。解禁するかどうか内閣府の専門調査会で検討課題になっている。また、胚モデルについても、調査会は6月から具体的な規制のあり方について検討を本格化させる。(野口憲太)

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