緊急避妊薬を処方箋(せん)なしで買える「OTC医薬品」にするための国の研究事業で、緊急避妊薬を試験販売する薬局が近く増える見通しだ。日本薬剤師会が今月下旬をめどに、200~250カ所ほどを追加する方向で調整している。現在は各都道府県に数カ所しかなく、地域ごとの偏りを減らしてデータの収集体制を拡充させる。

 緊急避妊薬は排卵を遅らせる薬で、性交後72時間以内に飲むと8割の確率で避妊できるとされる。購入には医師の処方箋が必要だが、昨年11月末に研究事業が始まり、全国145カ所の「協力薬局」で処方箋なしで買えるようになった。

 研究事業では、購入者へのアンケートを通して処方箋なしでも適正に販売ができるか検証する。ただ、協力薬局は、研修を修了した薬剤師がいるなどの条件があり、各都道府県に2~6カ所しかない。北海道には旭川市内の3カ所だけだ。

 事業を委託された日本薬剤師会によると、今年1月末までの販売実績は全国で2181件。最多は東京都の266件で、神奈川県が231件、大阪府が169件だった。青森、秋田、山形、島根、山口の5県は10件未満だった。

 研究事業は3月で終了予定だったが、厚生労働省は「データ不足」を理由に来年3月までの延長を決めた。

 日本薬剤師会によると、人口あたりの販売数が少なかった地域や1カ所の薬局に購入者が集中した地域を中心に、協力薬局の追加を予定している。厚労省の担当者は「参加の上限は設けていない。手を挙げる薬局があれば、更に追加することもある」と話す。

 一方、研究事業の期間が1年延長されたことで、早期のOTC化を求める市民団体からは反発の声が上がる。

 中高生向けの性教育講座などを実施しているNPO法人ピルコンの染矢明日香理事長は10日、国会議員向けの勉強会で、研究事業の昨年度の調査結果で価格以外では満足度が高かったことなどを挙げ、「これ以上(OTC化を)延ばしてほしくないと何年も前から申し上げている。どのくらいの件数があれば十分なデータ数になるのか」と、厚労省の担当者に尋ねた。

 厚労省の担当者は「妥当な数は簡単に申し上げられないが、年齢制限の要否やプライバシー確保のあり方といった論点を調査する。遅らせるということは考えていない」と答えた。

 緊急避妊薬の販売対象は16歳以上で、18歳未満は保護者の同伴が必要。購入時にその場で服薬する。その後の経過について、アンケートに答える必要がある。

 協力薬局は研究事業のウェブサイト(https://www.pharmacy-ec-trial.jp/)に掲載されていて、電話予約が必要。(足立菜摘)

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