この春のセンバツ甲子園に出場した熊本国府野球部の山田祐揮監督。就任3年目、31歳の若さで初めての甲子園に導きました。

今回は、この山田監督に1日密着し、一体どんな人なのか取材しました。

_午前8時

山田監督「おはようございます」

熊本国府野球部の1日は朝礼から始まります。身体をしっかり休める狙いで朝練はしません。

山田監督「シートノックとマシン1か所、シートバッティング、フリーバッティングという順番でやっていきます。シートバッティング投げるピッチャーが佐藤、大谷、川津、稲次、この4人が投げます」

練習メニューを指示するのが山田祐揮(やまだ ゆうき)監督(31)。


熊本工業高校で選手として甲子園に出場。

近畿大学を卒業後、宮崎県の日南学園高校で4年間コーチを務め、2021年から熊本国府高校の監督に就任しました。

そして、3月行われたセンバツ高校野球。山田監督率いる熊本国府は、甲子園初出場で初勝利と、新たな歴史を刻んだのです。

山田監督は地歴公民科の教員で、野球部員も多くいる3年生の2クラスの副担任。監督と部員の関係と言えば厳しいものを想像しますが・・・


山田監督「(身長測定中)いいけん、早く早く。何回もせんでええて もう~」


エース 坂井理人選手(3年)「学校では学校の先生という感じで、生徒と仲良く接していて、グランウンドとはまた違うなと」

記者「どっちが優しい?」

坂井選手「学校の方が優しいです」

『いいから、そういうの。ゆっくりしてくれ』

ではグラウンドでの顔は?

_午後1時30分

学校から離れた場所にあるグラウンドまではバス移動。山田監督が運転します。

山田監督「寝ても構わんし、指導者が運転しているのに『寝るなんてあるか!』と僕らの時代はそうでしたけれど、『いいから、そういうの』って。ゆっくりしてくれ。ただ、グラウンドに入ったら一生懸命やれよと」

グラウンドに到着し練習が始まると、何やらベンチにある張り紙を確認する選手たち。

それにはどの練習で誰が投げて、誰が打ち、誰がどこのポジションに就くかまで、部員87人の名前が載っています。

山田監督が授業の合間や自宅で作っているものです。

87人の名前が全部載っている紙

山田監督「子どもたちが、何かしら関わっているというのが目に見えて分かるというのがすごく大事で、この子たちをどうにか練習にうまく関われるようにしてあげたい。ただ、それだけなんです」

目を光らせているのはグラウンドの隅

そして、指導の合間に密かに目を光らせているのがグラウンドの隅の方。

トスバッティングやノックを受ける選手たちの動きです。

山田監督「『自分はどうせ見られてないだろう』という時の行動を見ておくと、この子は試合で使えそうだなというのがよくわかります。こういう時に必死こいてやれる子が伸びます」

山田監督「あの時こういうことしてたでしょ。『この時必死に打っていたから打てたんだよ』と言うと嬉しいですよね。見てもらえているんだと」

野田希主将(3年)「メンバーに入っている、入っていないとか関係なく、色んな選手とコミュニケーション取って、一人一人見てくださるのですごく良い監督だなと思います」

日本一はない「何か違う」

_午後8時過ぎ

練習を終え、1人暮らしの自宅に帰るとすぐに夕食の準備。

山田監督「包丁使うのこれだけです。包丁の出番は終了です」

夕食はYouTubeで野球関連の動画を見ながら。

帰宅して30分足らずで夕食を済ませました。

山田監督「洗い物は後でするんで、明日の練習だけもう一回・・・」

そう言って取り掛かったのは、グラウンドに掲示していた練習メニューの作成。

監督、まだ着替えていません。

野球の事がひと時も頭から離れません。

そんな山田監督、高校時代から当時のコーチに指導者の道を勧められたといいます。

山田監督「高校野球をやることはお金払ってもできないので、この年齢だと。権利は今の高校生にしかないので、その高校生と一緒に目標を追えるのであれば幸せだなあと思って」「すんごい楽しいですよ、今」

監督として31歳で甲子園初出場、初勝利。

その裏側には毎日の練習に向けた緻密な準備と、選手たちを見守る温かくも厳しいまなざしがありました。

最後に、監督しての目標を聞くと意外な言葉が。

山田監督「日本一はないですね」

記者「甲子園優勝ではない?」

山田監督「何か違う」
「子どもたちの目標である甲子園を一緒に目指すが僕がやりたいこと。結果的に行ける行けない、勝ち上がる、勝ち上がれないはあるとは思うですけど…それでいいかな」

ただ、夏の甲子園に向けて闘志を燃やします。今の3年生は、監督として初めて勧誘し入学してくれた生徒たちだからです。

山田監督「もうお金払っても彼らと野球できないから、なんとか夏、行きたいですね。もう一回」

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