食べられる花『エディブルフラワー』をご存じですか?
料理を彩り、見て、食べて、楽しめるエディブルフラワーの魅力と、その生産者が“花に込める思い”を取材しました。
新潟県阿賀野市の田んぼ道を進んだ先にたたずむ三角屋根の建物。
今年6月にオープンしたカフェ・SOEL(ソエル)では、花で彩られたスイーツや、まるで“花束のような”紅茶を味わえます。
ただの飾りではないこれらの“食べられる”花を育てている脇坂園芸の脇坂裕一さんは、「人を幸せにする農産物は世の中にたくさんあるだろうけど、一瞬でその効果が出るのがエディブルフラワーだ」と、その思いを語っています。
花を育てて40年だという脇坂園芸の脇坂裕一さん(62歳)に、『食べられる花=エディブルフラワー』を栽培しているハウスを案内してもらいました。
色鮮やかに咲くあの花もこの花も、“みんな食べられる”そうですが、そもそも観賞用の花との“違い”ってなんでしょうか?
「種類は一緒なんですけど、農薬をやるかやらないか…」
「花って結構、毒があるんですよ。毒があるかないか、っていうのが一番重要」
無農薬で育てるからこそ、こんな苦労も…
「虫がいるかいないか…」
「無農薬だから虫はつくよ。でも、避けられない」
きれいなだけでなく安心して口にできる花を、手間暇かけて育てています。
新潟県立新発田農業高校を卒業後、“日常を彩る花”に魅力を感じて栽培を始めた脇坂裕一さんがはじめに育てていたのは、もちろん観賞用でした。
エディブルフラワーの栽培は、13年前に東日本大震災の被災地で行ったボランティア活動がきっかけになったそうです。
「震災が起きて、建物が流された荒れ地に土を見つけて、そこに花を植える活動をやったんですよ…」
津波で壊滅的な被害を受けた岩手県大槌町に何千株もの花の苗をトラックで運び、多くの建物が跡形もなく流された土地に住民とともに花を植えた脇坂さん。
住民からの喜びの声を聞きつつも、ある葛藤が生まれました。
「災害とか、人が困ったときに、花なんか食えないし…。『花って必要なのか?』って悩んじゃったんですよね」
言いようのない無力感にさいなまれたという脇坂裕一さん。
しかし、ボランティア仲間の言葉が脇坂さんの光になりました。
「震災が起きた直後は『生活物資』が求められる。でもそういうのが行き渡った後に一番必要なのは“癒し”じゃないですか?って…」
「帰ってきて、いろいろ悩んで…。その時に、『花を食べればいいんだな』って」
こうして、2011年から本格的にエディブルフラワーの栽培をスタート。
今では年間を通じて30種類ほどを新潟県内外の飲食店などに出荷し、文字通り『料理に“花”』を添えています。
そんな脇坂さんの長年の夢が実現したのが、カフェ・SOEL(ソエル)です。
「ここの目的は人とのコミュニケーション。人が集まる場所にしたかった」
「今、なかなか大変な世の中じゃないですか。安定しているように見える人でも、何かしらの不安とか苦しみとか抱えているのが普通なので…」
「人としゃべるっていうのが、一番の薬」
新潟県阿賀野市の五頭連峰と田園風景をのぞみつつゆったりとした時間が流れる店内でいただく、地元産の材料にこだわったスイーツと淹れたての紅茶やコーヒー。
そして、そこに添えられた花の色彩が、お客の心を癒してくれます。
「花のスイーツが出てきたときにはきっと喜んでくれるだろうから、まずそこで解れてもらう。そこから、何か聞きたいことや話したいことがあったときに自然に話せる…」
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