ドジャース・大谷翔平選手の快挙達成の余韻も冷め切らない中。
盛岡の老舗そば店、直利庵が「ホームラン印 野球そば」というメニューを発売したと聞き、早速伺ってきました。

こちらが「直利庵」です。
わんこそばの名店として名高いですが、コロナが流行して以来、わんこそばの提供をやめ、丼に入った温かいおそばや、ざるそばなどの冷たいおそばを中心ととしたメニューに切り替えて営業しているそうです。

このお店で9月13日から提供されているメニューが「ホームラン印 野球そば」です。なんか、新メニューにしては大物感ただよう名前ですね。

実はこのメニュー、「新発売」じゃないんです。

お店で提供されていたのはなんと、昭和10年ごろ。
昭和10年に地元の新聞に掲載されていた広告がこちらです。

掲載されているメニューはなんと!「ざるそば」「ひやむぎ」「ホームラン印 野球そば」です。

日本最古の職業野球チーム「読売巨人軍」が創立されたのが昭和9年。
昭和10年といえば、まだプロ野球が一般的ではなく、大学野球の早慶戦の方が人気があった時代。後の大スター選手、長嶋茂雄さんも、王貞治さんも生まれる前。
そんな時期に「ホームラン印 野球そば」です。
「先見の明」があったとしか思えません。
そこで、直利庵の女将さん、松井裕子さんにお話を伺いました。
「私の祖父の松井弥兵衛は高校野球のシーズンになるとお店の仕事を投げ出して野球を観に行く、大の野球好きでした。新しもの好きの祖父は、昭和9年に仙台で行われた日米野球の試合を観に行ったのではないかと思います。そこでベーブ・ルースのホームランを見て感動し、『ホームラン印 野球そば』をメニューに加えたのではないかと思います」

松井弥兵衛さん

確かに松井弥兵衛さんのお話をうかがうと、わんこそば、天ぷらそばや「カレーそば」などをいち早くメニューに取り入れたり、横綱そば、小鳥そばなど、今では「どんなレシピだったかわからない」といわれる変わったメニューのそばを考案するなど、アイデア豊かな人だったようです。
そんな弥兵衛さんがベーブ・ルースのホームランを見たら・・・・
そりゃ「野球そば」か「ホームランそば」を作りたくなるはず!



しかし、復活までにはかなりご苦労されたようです。
地元の新聞に「食べたことがある方はいませんか」という広告を載せたりして情報提供を求めますが、情報は得られず。

そこで裕子さんは「おじいちゃんならこういう材料を作ったに違いない」という「孫(である自分の)の勘」を頼りに、「令和の『ホームラン印 野球そば』づくり」に取りかかりました。

何度か食材を入れ替えながら、ついに「令和の『ホームラン印 野球そば』」が完成しました。

直利庵 松井裕子さん


早速(と、言いつつかなり引っ張りましたが・・・)、令和に復活した「ホームラン印 野球そば」をいただきます。

なんと「冷たいおそば」です。

「5月に広告を出していましたので、冷たいそばではないかと推測しました」(松井裕子さん)

芝生をイメージした「めかぶ」とボールをイメージした「温泉卵」、そしてバットをイメージしたエビの天ぷらが乗っています。
エビの天ぷらはかなり大きく、立派です。
まさに「ベーブ・ルース」のバットです。

めかぶのねばりと、歯ごたえが良いアクセントになっています。
そして、さすが名店だけにおそばの香りがとても良いです。
つゆは主張過ぎず、でもしっかりと良い後味が残ります。
おいしいです。



直利庵さんにはメジャーリーガー、菊池雄星さんが何度か来られたことがあるそうです。そこで聞いてみました。
「大谷選手が来られたら、何を食べて欲しいですか?」
即答です。「野球そばです」。
これは、愚問でしたね。



おじいさんの味を追い求め、たどりついた令和の「野球そば」。
おじいさんの作られた「野球そば」が「ベーブ・ルース」とすれば、裕子さんが作られた「令和の野球そば」は大谷翔平選手、とでも申しましょうか。
これから大谷選手のように、みんなから愛されるメニューになることを期待したいと思います。

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