沖縄県民はもちろん、観光客にも高い知名度を誇る離島がある。本島南部、南城市の橋で渡れる島、「奥武島(おうじま)」だ。
那覇市から南東に約18キロ。本島から100mほどの短い橋を渡るとたどり着くのが、周囲1.6キロ、人口830人ほどの奥武島は、海の香りが漂う海人(ウミンチュ)の島。
島の中心には、かつて中国大陸に存在した大国「唐」の難破船を助けたお礼として送られた観音像を祀る観音堂があるなど、独自の伝統行事が今も残る、歴史ある島で近年、特に人気なのが…、天ぷら。
小さな島に3つもある天ぷら店は、常に多くの観光客でにぎわう。
天ぷら店で働く人は…
ーー1日中揚げっ放し?
「そうですね、忙しい日はずっと、揚げてます」
「沖縄の天ぷらはふっくらして衣が厚いと思うけど、少しこっちは薄い。なので、少しふっくらしていても、カリっとしている」
橋を渡ったすぐのところにある「中本天ぷら」は、創業およそ40年。行列が絶えない人気店。
島の反対側にある創業16年の「大城天ぷら」もいつでもアツアツの天ぷらが楽しめる。
お客さんは…
「揚げたてがイチバン。お盆で食べたはずなのに、もう天ぷらが欲しくなるって、不思議ですよね。うふふ。ウチナーンチュだから、しょうがない」
「照ちゃん天ぷら」は、島一番のボリュームとユニークなメニューが特徴。
ーー人気メニューは?
「もずくかな。もずく、いか、さかな。あと“海ぶどう天ぷら”。ここにしかないから」
「天ぷらアイランド」県民・観光客が知る奥武島の“表の顔”だとすれば、この島には日本中を探してもなかなかお目にかかれないであろう、びっくり仰天の催しが開催される“横顔”もある。
訪ねたのは去年、カジマヤー(数え97歳の長寿)を迎えた嶺井シゲさんのご自宅。部屋には、嶺井家親族の大集合写真がいくつも飾られている。これは…?
嶺井シゲさん
「もうこれが楽しみで!」
「私兄弟が1人しか残ってなくてさみしいけど、このオリンピックを迎えるたびに、孫たちも子どもたちもいっぱい集まるんですよ。だからおばあは寂しくないから」
奥武島で4年に1度行われる“オリンピック”?
実は奥島島では、島唯一の運動場で、オリンピックと同じ年に4年に1度行われる一大イベントが行われる。「嶺井藤八・ウシ記念オリンピック」、通称・ミネリンピック。
参加する人たち全員が一門。「東徳前家」の門中(※血縁でつながる集団)という、親族による大運動会だ。
「ミネリンピック」が始まったのは、1996年。門中の中心だった嶺井藤八、ウシ夫妻の7人の子どもたちが、それぞれの家族の交流を図ろうと始めた。
今では、最年長となった三女のシゲさんが中心となり、数百人の大家族が関わるイベントに。コロナ禍により4年前の中止を挟み、今年は8年ぶりに大会が復活する。
嶺井シゲさんの甥・光さん(奥武区長)
「前回が東京オリンピックの時で、コロナで開催できなかったものだから、8年ぶりね。みんな“待ちかんてぃ”しているわけ」(※首を長くして待っている、の意)
嶺井シゲさん
「晴天で成功するように、私も朝晩祈っているんですよ」
これまでは旧盆時期に開催されていた「ミネリンピック」だが、今年は暑さ対策で10月の連休に開催予定。県外からも帰郷して参加する人もいて、今年は過去最多、350人の親族が大集合する予定だ。
嶺井シゲさん
「いつも、おばあ元気ですかと声をかけてくれるし、本当に嶺井家の身内、家族はとても仲が良いんですよ。本当にありがたくてね。これが、おばあの一番の誇りだね」
天ぷらの香り漂う、のどかな島を訪ねると、本物のオリンピックにも負けない熱気を見せる、親族の絆がありました。(取材 片野達朗)
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