沖縄県内、主に本島南部には、綱引きの伝統を継承する地域がところどころに残り、個性あふれる伝統の綱が引き継がれています。本島南部の南風原町(はえばるちょう)で今月、21年ぶりに開催される伝統の「津嘉山大綱曳き」に向け、世代を超えて1つになる人々を取材しました。

削られているのは、全長4メートルのリュウキュウマツ。細かに確認しながら作るのは、綱引きに欠かせない道具「カナチ棒」です。

▽制作する人
「こっちまで削ったら低くなる(均一でなくなる)よ」

今月、南風原町津嘉山地区では21年ぶりに大綱曳きが開催されることになり、実行委員会は道具づくりなど準備に励んでいます。

津嘉山大綱曳きは、五穀豊穣などを願って行われる、津嘉山地区の伝統行事で、
およそ10年に1度開催されてきました。

新型コロナウイルス流行などで、近年は開催が見送られてきましたが今回、住民同士のつながりを深め、伝統を継承しようと開催が決まりました。


住民が東<あがり>と西<いり>に分かれて行われる大綱曳き。カナチ棒づくりは東だけが行うのが決まりです。

カナチ棒を造るのは「カナチ人」。カナチ人を務めることができるのは1度きりで
名誉なことだとされています。

▽今年の「カナチ人」
「きついですね。昔の人は全部手作業ってやっぱすごいなって思う。自分たちは取るにも削るにも機械」

別の場所では、平たい竹を編んでいます。作っているのは…旗頭です。過去の大綱曳きで使用された実物を見ながら、手探りで作業をしています。

「同じようにはできないと思うけど、次の大綱曳まで壊れないように作る」

東をとりまとめる親頭の桃原和也さん。地域の伝統を継承するためには、道具の作り方を継承していく必要があると考えています。

▽桃原和也さん 「これ、前回の旗頭だから、またこれと同じように作らないといけない」

ー新しく?これも使えそうな感じがしますけど…

▽桃原和也さん 「大綱曳の目的は作り方の継承。あるものを使ったら簡単さ。だから全部ひとつひひとつもう1回作り直す」

21年ぶりの開催で課題となっているのは、指導者不足です。

▽桃原和也さん 「とても(影響が)大きいですね。20年たてば前やっていた方々もそれなりの年齢になっているし。どうしても教える方がいないと 自分たちも手探りでやってるから。あるものを見ながらやっているけど 時間かかっている」

本番までに間に合うのでしょうか。たずねると、こんな力強い返答が。


▽桃原和也さん 「もう日は決まってるので、7月27・28日に向けて頑張るだけです。責任重大だし 1番の責任は、綱を曳いて東が勝つこと」

勝ちたい気持ちは相手も同じ。西の作業場です。西の旗頭の頭は、そろそろ完成でしょうか。東よりも作業が進んでいます。

▽與座謙作さん 「結構東よりも進んでいるみたいなので、そこは東に勝っているのかなと。今回このメンバー見ると多分勝てる気がしています」

すると横から先輩が…
▽與座正夫さん 「多分じゃないよ、絶対勝てる、絶対勝てます!」

東も西もライバル意識を燃やしています。西にいる青年会のメンバーは装飾を担当。西の親頭、與座正夫さんが指導します。


▽與座正夫さん 「自分たちも青年会時代に同じように作業してたので気持ちは同じ。若者にやり方を教えているほうが自分も楽しいわけさ。昔のことだけじゃなくて新しいことも取り入れて、できたらいいんじゃないかって」

時代に合わせながら、伝統を次の世代へ。先輩の励ましに、若い世代はー

▽青年会・高嶺結知郎さん 「偉大です。(若い世代が)難儀、と言ってやらないのは簡単だなって自分がやってみてわかる。先祖が受け継いできたものだからこそ、敬意を持ってやっていく、それが今自分たちがやっていくことかな」

「今だったらSNSだったり、そういうツールを使って人を集めていくっていうのは
大事だと思いますね」

伝統継承に必要なものは何でしょう?区長と青年会長、それぞれに問いかけると、思いはひとつでした。

▽津嘉山区・金城清区長 「結の心(助けあう心、の意)が一番大切なのかなと」

▽青年会・高嶺結知郎さん 「みんなで助け合ってやるところだったり、地域性とか人とのつながりというのはここでしか作れないもの。やってわかることだと思います」 

伝統を受け継ぎ、地域とつながる大綱曳き。世代を超えて助け合いながら、本番を迎えます。

【取材MEMO】
津嘉山大綱曳きの本番は7月27日と28日。7日には住民も参加して綱打ちと呼ばれる作業が行われます。「頼みの綱」は地域のみなさんということで、大綱曳き実行委員会では500人の参加を呼びかけています。(取材 黒島ゆりえ)

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