パラ陸上に本格転向してわずか4年で、日本期待の星になった選手がいる。25歳の福永凌太選手(日体大大学院)。神戸ユニバー記念競技場で開催中のパラ陸上世界選手権では23日、男子400メートル(視覚障害T13)決勝で銀メダルに輝いた。
立ちはだかる高い壁に、表情は決して明るくなかった。
決勝はスタートから積極的なレースを見せ、予選から1秒以上タイムを縮める47秒86。その走りを「合格点」と振り返ったが、隣のレーンでは世界記録保持者のアスマニ選手(アルジェリア)が世界新の46秒44を出し、背中を追うことしかできなかった。
福永選手は難病の「錐体(すいたい)ジストロフィー」で徐々に視力が低下した小学生の時に陸上に出会い、大学まで健常者の世界で戦った。高校では棒高跳びで全国高校総体(インターハイ)に出場し、大学では十種競技に挑んだ。今も低下し続ける視力は両目とも0・1以下で、視野の中心が見えづらく、パラに転向した。
視覚障害の中で最も軽いT13クラスで初めて日本代表に選出された昨年の世界選手権は、400メートルと走り幅跳びでアジア新を出す鮮烈なデビューだった。今大会は選手宣誓を務めるなど、一躍日本代表の「顔」になった。
環境を変えるため母校の中京大職員を辞し、日体大大学院でコーチングについて学びながらレベルアップを目指す。レース後は「(アスマニ選手は)速いタイムだが、全く届かないわけじゃない。自分を信じて到達したい」。ずっと描いてきた世界一の夢を、簡単に諦めるわけにはいかない。【川村咲平】
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