体操・NHK杯 男子2回目(19日、群馬・高崎アリーナ)
岡慎之助選手(徳洲会体操クラブ)342・727点=優勝
5種目めを終え、岡慎之助選手の腰はビリビリとしびれるように痛みが増していた。3位には2点差以上つけて首位。上位2人に与えられる個人総合でのオリンピック出場権の視点で見れば「余裕」はある。
体の状態を気遣う米田功監督から、最後の鉄棒で技の難度を示すDスコア(演技価値点)を下げることを提案されたが、首を振った。理由を「攻めた演技で(最後まで)いきたかった」と説明する。強気で前向きな姿勢は、これまでも体操人生を救ってきた。
高校1年、15歳で地元を離れて徳洲会に入った後はけがとの闘いだった。2022年4月の全日本選手権では右膝前十字靱帯(じんたい)を断裂。パリ五輪選考が本格化する前の大けがにも、「意外と動けて大丈夫そう。五輪から逆算しても時間はある。できることをやる」と前を向き、足の強化を重点的に行って「脚力、瞬発力がついた」とパワーアップして復帰した。
4月の全日本選手権で橋本大輝選手に次ぐ2位。橋本選手が棄権した今大会は、あん馬で2回ともミスが出たものの「落ち込むことはない」と気を強く持ち、その後のつり輪や平行棒で立て直し首位をキープした。
全選手最後の競技者となり、会場の視線を一身に浴びての最終種目。足の指の先までピンと伸ばしての回転に、豪快な離れ技を次々と決めていく。「鉄棒といったら着地」。勢いよくバーから手を離すと空中で複雑に体をひねり、マット上にピタリと両足をそろえて舞い戻った。「(全日本決勝でけがをしてから)2年間本当に頑張ってきて良かった」。4歳で体操を始め夢見てきた大舞台を、自らの積極性で引き寄せた。
橋本選手と並び、夏のパリで日本体操界を引っ張る20歳のホープ。水色の代表ジャージーに身を包み、少しはにかみながら「やらなきゃいけないし、やるしかない。団体でも、個人でも金メダルを狙って、自分の強さを最後まで演じきりたい」と宣言した。【角田直哉】
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