女子やり投げ決勝、最終投てきで逆転優勝を決め笑顔を見せる北口榛花=国立競技場で2024年5月19日、中川祐一撮影

陸上セイコー・ゴールデングランプリ(19日、東京・国立競技場)

女子やり投げ優勝=北口榛花(JAL、63メートル45)

 5投目を終えて62メートル02で2位だった北口榛花は「いつも通りって感じ」と、やはり冷静だった。6投目で放ったやりは、きれいな放物線を描き、63メートル45でトップに立つ。金メダルを獲得した2023年世界選手権に代表されるように、最後に逆転する「いつも通り」の展開で試合を制した。

 世界選手権で終盤まで優勝争いを演じた、ルイスウルタド(コロンビア)との再戦だった。感慨に浸るでもなく、北口は序盤から60メートル台をマークし、終盤に記録を伸ばす。上体が突っ込みがちになっていたことに気づくと、後半にはフォームを修正。理想の投げ方に行き着くにはまだ調整が必要なものの、やりの軌道自体は及第点だったという。

女子やり投げ決勝、逆転で優勝を決めた北口榛花の最終投てき=国立競技場で2024年5月19日、中川祐一撮影

 「私の場合、(体に)柔らかさがないと高さのあるやりが出ない」と北口。冬場に国内で行ったトレーニングでも、過度なウエートトレーニングで体が硬くなってしまうことを避け、登山などで持久力を高めることを優先した。

 コンディションを重視することは、チェコ出身のダビド・セケラク・コーチとの共通認識でもある。「自分の動かしやすい体に近づける」ことで、北口は試合を重ねるごとに「重りとか鎧(よろい)がはがれてきている」。手応えを独特の言葉で表現する。

 パリ・オリンピックは世界選手権で優勝して代表入りが決定。選考の重圧なく試合に出られることも、「多く出るタイプ」を自認する北口にとっては好材料だろう。約2万人と国内の陸上大会では上々の客入りに見合う活躍を披露した。

 現在の体は「(単なる)板から柔らかい板に変わった」と北口は言う。「もうちょっと柔らかくなって、そこに『芯』が通ればいい」。言葉にすると抽象的だが、細かな改良ではなく、あとは感覚的に心身の状態がかみ合えば、パリでの頂点も見えてくるのだろう。【岩壁峻】

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