22日にあった全国高校駅伝は、外国人留学生の起用が最短3キロ区間(男子2、5区、女子3、4区)のみに制限され、レースに与える影響にも注目が集まった。今大会は、留学生起用の効果が限定的なものにとどまった。
男子優勝の佐久長聖、女子優勝の長野東はともに留学生がいない。日本選手のみのチームが男女ともに大会を制したのは、2013年の男子・山梨学院大付(現山梨学院)、女子・豊川(愛知)以来11年ぶりだ。
ルール変更の影響で象徴的だったのは、ここ10年で男子優勝3回の倉敷の失速だろう。
前回までは最長1区(10キロ)以外は留学生を起用できた。2番目に長い3区(8・1075キロ)で留学生が走ってレースの局面を変える働きを見せてきた。
しかし、今大会は4区終了時点で10位と波に乗れず、5区を担った1年生の留学生キプロブ・ケンボイも思うような走りができず、区間14位だった。最終的に10位でフィニッシュし、14年大会以来10年ぶりに入賞(8位以内)を逃した。
倉敷の中元健二監督は期する思いはあったという。
「留学生の区間配置が変わったタイミングでもあり、最低でも入賞はしたかった。日本選手には『自分たちが強くなれるチャンスだよ』と言ってきたが……」
ケンボイについては「本来は長距離向きの選手だが、ルールはルールなので」と思いやった。
一方、女子は上り基調で地力が問われる3区に留学生全8選手が集中し、1~8位の区間上位を独占した。区間トップのルーシー・ドゥータ(青森山田)は、従来の記録を7秒更新する9分14秒の区間新記録を樹立。日本選手トップの区間9位の選手との差は33秒だった。
しかし、1、2区の遅れを巻き返してトップに立つことはできず、最短距離では「ゲームチェンジャー」になり得なかった。
今回のルール変更は留学生頼みの展開が多かった最近のレースを疑問視する声が高まったことによるものだった。
日本陸上競技連盟強化委員会の高岡寿成シニアディレクターは「留学生の影響を受けにくくなったのは事実だと思う。(限られた区間で)留学生の力をいかに引き出せるかが重要」と振り返った。
留学生に関するルールは、今回の変更が最終結論ではない。19年に47都道府県の高校体育連盟陸上専門部を対象に行ったアンケートの回答でも「問題は留学の目的や経緯。日本人であっても、他県からの進学、過度な勧誘や授業料免除など高校生の部活動としてふさわしいのか」という問題提起があった。
東洋大の竹村瑞穂准教授(スポーツ倫理学)は疑問を呈する。
「そもそもの『入り口』を明確にすべきだ。高校は教育の中での競技活動が前提としてある。留学生の学力保証や透明性はどのように確保されているのか。留学生受け入れの前提条件を整えていなければ、今回の区間変更の拡大も内々の対応に終わったような印象を与え、不信感を招いてしまう」
留学生を巡るルール作りは複雑で、勝利至上主義や公平性も立場によって見解が変わる。「正解のない問い」の答えに少しでも近づくための検討を、これからも続けなければならない。【岩壁峻、生野貴紀】
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