手話が語る福祉のコーナーです。誰一人取り残さない「インクルーシブ」という言葉を、いろいろな場所で見るようになりました。岡山のプロスポーツでも、こうした誰もが一緒に楽しめるインクルーシブな取り組みが広がっています。

(生本ひなの記者)
「きょう(11月24日)はここで障害の有無や年齢など関係なく全ての人が一緒にサッカーを楽しめるイベントが開かれています。早速行ってみましょう!」

明治安田J2リーグ、ファジアーノ岡山が11月に開催したパラスポーツの体験イベントです。

(視覚障害者サッカー・岡山デビルバスターズ 安藤久志代表)
「ブラインドサッカーを知っている人?全盲もしくはそれに近い人がするサッカーで(ボールの中の鈴を鳴らし)、鈴が入ったボールを蹴ったり、転がして位置を確認する」

目が見えるゴールキーパーや相手のゴール位置などを声で伝える「ガイド」と呼ばれる人たちと力を合わせてプレーするブラインドサッカー。音と声によるコミュニケーションがカギを握る競技です。

(岡山デビルバスターズ 安藤久志代表)
「見える人と見えない人がうまく混ざり合って競技が成立するというところも含め、パラスポーツとしてだけでなく“助け合い”というところに重点を置きながら広めている」

こちらは、アンプティサッカー。足や腕に切断障害などがある人が行う7人制のサッカーです。

(アンプティサッカー アフィーレ広島 藤谷佑太さん)
「使うのはこのクラッチのみ、全身を使う」

クラッチを使うことでアンプティサッカーでしか見られないアクロバティックなプレーが魅力です。国内の競技人口はまだ100人ほどで、老若男女が同じピッチで戦うのも競技の特徴。事故で片足麻痺になった藤谷さんも競技を通じて多様性への理解につながればと言います。

(アフィーレ広島 藤谷佑太さん)
「歩くスピードの違いや義足を着ける手間が面倒ということなどはあるが、「障害」と思っていない選手も多い。少しでもこういう機会を通じて知ってもらえたらうれしい」

(体験した人は…)
「久しぶりにボールが蹴られてすごく楽しかった。いま、ケガで左足が使えない。新しい世界を見せてもらえた。いい体験ができた」

(ファジアーノ岡山 森井悠社長)
「老若男女、障害の有無に関わらずいろいろな人がスポーツを楽しめる環境の実現を目指していきたい。こういう交流を通じて日頃の行動が少しでも変わるきっかけにもなれば」

一方、プレーだけでなく観戦もインクルーシブになっています。

(生本ひなの記者)
「こちらでは耳が聞こえない人も、より試合を楽しむためのある実証実験が行われています」

11月23日、岡山市で行われたバレーボールSVリーグ、岡山シーガルズのホーム戦。手話放送を担当している音田さんに協力してもらい「スマートグラス」と呼ばれる眼鏡型端末をかけて試合を観戦してもらいました。

のぞいてみると・・・レンズに文字が映し出されています。音声をスマートフォンが拾って文字に変換し、ペアリングした端末に表示される仕組みです。

スマートグラスを開発するアメリカの大手メーカーの日本法人で、岡山市に本社を置くビュージックスジャパン。端末をスポーツ観戦に活用する取り組みを進めています。

(ビュージックスジャパン 藤井慶一郎代表)
「ジップアリーナのような体育館で口元の見えないスピーカーから出る音はなかなか理解しにくいという聴覚障害者の声があった。スピーカーから出る音を書き起こしてスマートグラスに表示することができれば別の体験ができるのではないかというのが取り組みのきっかけ」

アリーナではDJが選手の情報などを伝えたり会場を盛り上げたり、音声で様々な情報が流れています。スマートグラスを着けて観戦すると、選手たちのプレーを見ながらそうした音声の情報を得ることができます。

(スマートグラスを着けてみて…)
「会場だと迫力があって、振動を体で感じて応援したくなる。用語の解説があるとより見やすくなると思う」

(ビュージックスジャパン 藤井慶一郎代表)
「耳が聞こえないバリア、外国人だと言語のバリア、スポーツを体験したことがないバリアなどいろいろな障壁があると思う。スマートグラスで解決できれば」

世界最高峰を目指すトップリーグに参戦した岡山シーガルズ。どんな人にもアクセスしやすくかつユニークな観戦体験を提供し、成長を続けるチームの試合をより多くのファンに楽しんでもらいたいと言います。

(岡山シーガルズ 高田さゆり取締役)
「勝っても負けても同じ気持ちを共有してもらいたい、そんな取り組みの中でスマートグラスはいろいろな可能性を持っているものではないか。スポーツというのはみんなで笑って、泣いて、悔しがっていろんな感情と戦いながら仲間と一緒にやるもの。特にバレーボールは団体スポーツなので応援する人も一緒に戦うという感覚になってもらいたい」

テレビの前での観戦体験にも新たな取り組みが。

音声実況が聞こえない聴覚障害者に向けた手話実況です。11月のTリーグ、岡山リベッツの試合では地上波の番組で手話実況付きで放送され、試合会場となったイオンモール岡山の館内モニターにも映し出されました。より多くの人が試合を観戦しやすい環境が広がっています。

(観戦したろう者は…)
「手話が付いていないと情報がなくてつまらないと思っていた。選手の様子など説明があることすら知らなかった。これまで試合の勝敗くらいしか分からなかったが、裏話や試合の状況を手話実況で知ることができてとても楽しかった」

チームとファンが一つになって競技に挑むことがスポーツの魅力。そこに誰一人取り残さない「インクルーシブ」な社会へのヒントがありそうです。

これがスマートグラス、軽くて私も便利に使えます。聴覚障害者のためだけに限らないんですね。2025年は東京でデフリンピックが開催されるので、こうしたインクルーシブな取り組みの広がりに期待します。

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