福島睦アナウンサー:
「TSKさんいん中央テレビと山陰中央新報のコラボ企画「カケルサンイン」。共通のテーマをテレビと新聞それぞれの視点で取材し、ニュースの核心に迫ります。11月の担当、田中祐一朗記者とお伝えします」

田中祐一朗記者:
「今回取り上げるのは、島根県川本町の地域活性化の取り組みです。川本町では、女子野球のクラブチームを創設、2025年4月の本格始動に向け、準備が進んでいます。人口減少が進むなか、どのように若い世代の定住を促すかが課題となるなか、女子野球を通じて、どのように解決しようとしているのか、その狙いを取材しました」

11月14日、川本町の屋内野球練習場を訪ねると、2人の女子選手がキャッチボールをしていました。
田邊澪さんは福岡出身の19歳、紺屋唯さんは鹿児島出身の18歳、ともに川本町を拠点に2025年4月に本格的な活動を始める女子硬式野球チーム「島根フィルティーズ」に入団が決まっています。
高校時代、硬式野球部でプレーした2人。
卒業後も野球を続けられる環境を探すなかで、「フィルティーズ」と出合いました。

田邊澪さん:
「川本は野球をできる環境がすごくいい」

紺屋唯さん:
「町全体が応援してくれるという部分、働きやすかったり、プレーしやすかったりすると思う」

「島根フィルティーズ」には高校を卒業したばかりの18歳から27歳まで、東京、広島、鹿児島などいずれも県外出身の13人の選手の入団が内定しています。
一足早く、2024年就任した森山一人監督。大田市出身で、プロ野球・近鉄、ダイエーでプレー経験があります。新しいチームのメンバーを自ら各地を回り、スカウトしました。

森山一人監督:
「一緒に練習してすごいなと思うことがあるんで、すごい楽しみです。町おこしっていうところがチームの主であるので、川本のみなさんに認めてもらえた状況で試合をしたい」

川本町の人口は現在、約3000人。10年間で約15%減少、65歳以上の割合も約45パーセントと人口減少、そして高齢化が進んでいます。
こうした状況に何とか歯止めをかけようと、町が着目したのが「女子野球」でした。

川本町まちづくり推進室・伊藤和哉課長:
「若い人に来てもらうために何ができるかというところで、これまで取り組んできた交流のまちであるとか、島根中央高校の魅力化といったところで、女子野球ということで進めています」

川本町では町内唯一の高校、島根中央高校の生徒確保に向け、12年前から学校の「魅力化」に取り組んでいます。その一環で2019年に創部されたのが、県内初の女子の硬式野球部。
高校レベルでは練習環境が十分整わない中、指導者、設備をそろえて県外からも部員を受け入れ、2024年度は26人が所属。生徒の確保にもつながっています。ただ、課題も…。

卒業した部員たちの「受け皿」です。町内にも県内にも社会人チームがなく、卒業後、競技を続けたい生徒は県外に行くしかありません。
そこで立ち上げたのが、社会人のクラブチーム「島根フィルティーズ」です。
都市部の若者に地方に移住してもらい、その地域の活性化に取り組むことを条件に、国が軽費を支援する「地域おこし協力隊」の制度を活用し、選手の給料を3年間、町が負担します。その後は地元の企業や団体が選手を従業員として受け入れ、生計を支えます。
競技に集中したい選手たちを、地域を挙げてサポートする仕組みをめざしています。

入団が内定している選手の一人、田邊澪さん。島根中央高校の卒業生で、野球部に所属していました。しかし、2024年3月に卒業したあと、野球を続けるため、町外に移住。今は、広島県廿日市市のクラブチームでプレーしています。

田邊澪さん:
「ここで女子野球チームができることは知っていた。話しているうちに、自分も戻りたいなという気持ちが大きくなって、戻ってきた」

日本代表を目指す田邊さん、野球に打ち込むことができる環境に惹かれ、川本町に戻ることを決めました。

川本町まちづくり推進室・伊藤和哉課長:
「ひとつは野球で、もうひとつが地域の活性化。若い視点だとか、川本初めて来た人の視点で町の情報発信をしていただきたい」

「フィルティーズ」は毎年5人程度メンバーを増やし、3年目には20人程度に拡大する計画です。

川本町まちづくり推進室・伊藤和哉課長:
「3年をメドに、全国でトップレベルのチームになって、またそれが町民の励みになったり、島根中央高校の女子野球部の目標になったり、そんなチームになることを期待しています」

若い世代の定住を進め、町に活気を取り戻す。
地域の人たちからの大きな期待を背に「島根フィルティーズ」は2025年4月、大きな一歩を踏み出します。

福島睦アナウンサー:
「スポーツには地域をまとめる、そんな力もありますよね」

田中祐一朗記者:
「はい。28日はそうした力を地域活性化に生かす取り組みをすでに進めている広島県三次市の例、そして川本町がこれから目指す姿についてお伝えします。今回取材した内容は、あすの山陰中央新報の朝刊にも掲載されます」

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