2023年の皐月賞を制したソールオリエンス=JRA提供

 デジタル報道グループの“真希バオー”こと中嶋真希記者が、上半期のGⅠ計12戦を予想します。第5弾は、牡馬クラシック3冠の第1弾、皐月賞(中山2000メートル)。ホープフルステークス(S)=同=を勝った牝馬レガレイラがクラシックに挑戦。牝馬が勝てば、76年ぶりの歴史的快挙です。しかし、競馬担当30年の師匠、松沢一憲記者は「データ的には買いづらい。思い切った予想をしてもいいんじゃないか」と気合を入れます。

ホープフルSの勝ち馬は……

 6日の阪神7Rで落馬負傷し、意識不明の状態が続いていた藤岡康太騎手(35)が10日、亡くなった。昨年のマイルチャンピオンシップは、急きょ代打でナミュールに騎乗し、優勝。2021年京都大賞典では、藤岡騎手が9番人気のマカヒキを5年ぶりの勝利に導いた。好騎乗の数々は、いつまでも競馬ファンの中で輝き続ける。ご冥福をお祈りします。

 胸が締め付けられるような思いだが、真摯(しんし)に馬と向き合い、予想することが記者の務めだ。今週は皐月賞。いよいよ、牡馬クラシックが幕を開ける。

 注目は、昨年末に牡馬を一蹴し、ホープフルSを勝ったレガレイラ。ホープフルS勝利からの直行は、19、20年の勝ち馬サートゥルナーリア、コントレイルと同じ。期待は一層高まるが、真希バオーは頭を抱えている。

 「ホープフルSがGⅠに昇格した17年以降の勝ち馬は、5頭が皐月賞に出走。サートゥルナーリアとコントレイル以外の3頭は、2ケタ着順なんですよね。勝つか、大敗か、両極端で……。しかも勝った2頭は、無敗の皐月賞馬。さらにコントレイルは、無敗の3冠馬。別格なんですよね」とうなった。「牡馬を相手に突き抜けたレガレイラの強さは圧倒的に見えましたが、コントレイル級なのかどうか。どう思います?」と師匠に聞いた。

 「うーん。データ的に牝馬は買いづらいというのが、ぼくの正直な気持ちだ」と師匠は言う。

 「日本ダービーは07年にウオッカが勝利。菊花賞は、21年にディヴァインラヴが3着と、牝馬も活躍している。しかし、皐月賞は1984年のグレード制導入以降、JRAのGⅠで唯一牝馬が3着以内に入ったことがないんだ。3歳4月の時点では、まだ成長が牡馬に追いついていないってことじゃないか」と指摘。「84年以降、3頭しか走っておらず、サンプルが少ないとはいえ……。好走例がないと、重い印は打ちづらいなあ」

 皐月賞は、波乱が起きやすいレースでもある。「過去10年1番人気は3連対とほめられた成績じゃない。馬連は6回が3510円以上の高配当。18年には伏兵馬同士のワンツーで1万2880円と荒れた。3連単は、17年には106万馬券が飛び出し、翌年にも37万円台の高配当だ。思い切った予想で勝負してもいいんじゃないか?」と師匠は意気込んだ。

松沢記者の本命は……

 ◎ジャンタルマンタル、○シンエンペラー、▲メイショウタバル、△レガレイラ、△ビザンチンドリーム、△ジャスティンミラノ

 師匠は、朝日杯フューチュリティーS(阪神1600メートル)を制したジャンタルマンタルを指名。「新馬(京都1800メートル)→デイリー杯2歳S(京都1600メートル)→朝日杯フューチュリティSと3連勝を達成して昨年のJRA最優秀2歳牡馬に輝いた。前走の共同通信杯(東京1800メートル)は、スローの流れに道中力んで2着に敗れたが、依然連対率は100%。関東への輸送も経験済み。2個目のタイトルを目指すぞ」

真希バオーの大胆予想

 馬連5頭ボックス(10点×100円=1000円)

真希バオーの馬連5頭ボックス

 (3)エコロヴァルツ

 (8)ジャンタルマンタル

 (10)レガレイラ

 (13)ジャスティンミラノ

 (14)シンエンペラー

 今年の皐月賞は、超難解。過去のレース映像や馬柱を何度も眺めるが、なかなか絞りきれない。そんな時に思い出すのは、「混戦を断つのは、Vライン馬だ」という師匠の格言だ。

 Vラインは、「レース中に一旦位置取りを下げて盛り返した馬は、3走以内に必ず激走する」という師匠独自の攻略法だ。今週は、ジャンタルマンタルと、シンエンペラーが該当する。

 シンエンペラーは、2走前のホープフルSでは、直線で粘り、レガレイラに差されたが4分の3馬身差と小差。前走弥生賞ディープインパクト記念(中山2000メートル)では、2コーナーで3番手まで上がった後、5番手に位置取りを下げた。直線、メンバー最速の上がりで伸びたが、1馬身4分の1差2着。Vラインを刻んでおり、上積みは十分だ。

 新たにコンビを組むのは、高松宮記念を勝利し、桜花賞3着と今季絶好調の坂井瑠星騎手。所属する矢作芳人厩舎(きゅうしゃ)の馬でJRAのGⅠを勝つことは、悲願だろう。馬の適性を見極め、数々の出世馬を出してきた矢作調教師は、シンエンペラーで逆転優勝を狙っているはずだ。

中嶋真希

 毎日新聞デジタル報道グループ記者。業務の傍ら、学生時代から興味があった競馬を本格的に勉強しようと、2014年、競馬担当の松沢一憲記者に勝手に弟子入り。得意技は、パドックで激走する穴馬を見つけること。皐月賞馬イスラボニータが大好きで、産駒の応援に励んでいる。

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