Jリーグ開幕当初から参戦する「オリジナル10」の一つ、清水エスパルスが27日、J2で2位以内を確定させ、来季のJ1復帰を決めた。感情を前面に出す秋葉忠宏監督を筆頭に、選手もサポーターも国内有数の「熱さ」を誇る名門クラブ。昨季の耐えがたいほどの悔しさが選手をたくましくした。
昨年は、手をかけたはずのJ1切符が土壇場ですり抜けた。2023年12月2日、シーズン4位でJ1昇格プレーオフに進んだ清水は決勝で、シーズン3位だった東京ヴェルディと対戦した。90分まで1点をリードしながら、後半追加タイムに相手にPKを決められて追いつかれ、リーグ戦順位で上回る東京ヴに昇格を譲った。
結果だけ見れば「あと一歩」に映るが、秋葉監督は足りなかった部分を冷静に分析してきた。「昨年は正直言うとメンタル的に少し弱く、もろい部分があった。自分たちから崩れるゲームが非常に多かった」
今季のテーマに掲げたのは「勝負強さ」。トレーニングの量を増やし、日ごろの練習から100%を出し切ることで、屈強な体と強じんな精神力を培うことを求めた。
秋葉監督は「名言」がちりばめられたスピーチで度々話題になるなど、優れたモチベーターとしての顔も持つ。J2水戸ホーリーホック監督時代から劇的な勝利を収めた後のインタビューでは「This is FOOTBALL!」と叫んで目を潤ませる。
23年4月に清水のコーチから監督への就任が発表されて2日後のアウェーでの初戦のキックオフ前には、自らゴール裏に足を運んでサポーターにメッセージを送った。情に厚く、涙もろい、熱血漢な秋葉監督のキャラクターもチームに欠けていた精神力の強化を後押しした。
成果は今季、特に重圧も疲労も色濃くなる終盤の大事な時期に結果となって表れた。9月18日の徳島ヴォルティス戦から10月6日の水戸戦まで4試合連続で先制点を献上。それでも選手たちの気持ちは切れることなく、逆転勝利もしくは同点に追いつくところまで持っていった。秋葉監督は「間違いなく我慢強く、したたかに、勝負強くなっている。昨年からの一番の大きな進化」と自信を口にしていた。
主力を担う元日本代表のMF乾貴士選手は、昨季からの変化をこう表現する。
「途中から出てきた選手がスイッチを入れて、しっかり仕事をしてくれる。本当に助かるし、チーム全員でやっている感じもすごくある。昨年とは違うところ」
シンプルに人を追い越して、どんどん前へ向かっていくスタイルは90分通じて相手の脅威となり、第35節を終えた10月20日時点の総得点は「65」でリーグトップを誇る。
22年以来のJ1での舞台が見えても、浮かれることはない。目標はあくまでJ2王者として来季のJ1に乗り込み、旋風を起こすこと。秋葉監督は「最後の最後に優勝にこだわりながら、その先のJ1での戦いも意識しながら、勝利に向かって最高の準備をしたい」と強調する。【角田直哉】
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