古豪が「決勝と花園だけ」という封印を解いて伝統のジャージーを身にまとい、現校名では最後の大会で準決勝突破を目指す。
第104回全国高校ラグビー大会三重県大会(県高体連など主催、毎日新聞社など後援)で初戦を突破した木本(熊野市)は27日、準決勝で四日市工と対戦する。前回まで7年連続準優勝の強豪との試合では「決勝と花園だけ」と部で決めているエンジのファーストジャージーを着用する。
四日市工の赤とは同系色のため、白が基調のセカンドジャージーの可能性があった。だが、来春に紀南(御浜町)と統合し、校名も「熊野青藍(せいらん)」に変わる木本は現校名で出場する最後の県大会になることから、大会側の配慮や相手の理解もあり、優先的にジャージーを選べることになった。
準決勝は熊野市・山崎運動公園で行われる。喜田裕彰監督は「地元の人たちに選手の雄姿を見てもらえる」と喜ぶ。中西佑吾主将も「地域やOBの皆さんに支えられてきた。プレーで恩返しをしたい」と意気込みを語った。
地元では木高(もっこう)と呼ばれる木本。1948年創部のラグビー部は県大会で9回優勝し、岐阜県代表と出場枠を争っていた時代もあった全国高校ラグビー大会には6回出場した。2010年には22年ぶりの花園で注目を集めた。
伝統のファーストジャージーはスクールカラーのエンジで、左袖に2本のラインが入る。県北部の木曽川と県南部の熊野川を表し、南北に長い三重の代表としての意気込みが刻まれている。
OBの中森滋人さん(65)によると、元々は紺のような色だったが、1976年に着任した大徳恒雄監督(当時)が「県大会の決勝進出は当たり前」という思いを込めて、「エンジのジャージーは決勝から」という慣例ができたという。当時、県内は木本と志摩の「2強時代」で、68年から89年まで22大会のうち、18大会の決勝が両校の対戦だった。ライバルを倒す意気込みをジャージーに込めていた。
時代は移り、県内の勢力図も変わった。木本は2016年を最後に決勝は遠ざかる。学校の歴史に区切りが付く大会で、今では目にする機会が少なくなったエンジのジャージーを着た選手が躍動することになり、木本が1980年に花園に初出場した際のメンバーでラグビー部OB会長の井本伊織さん(61)は「自分たちができる100%の力を出してほしい」と、「伝統」の後押しを受け、後輩たちが戦う姿を楽しみにしている。【下村恵美】
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