SVリーグの開幕記者会見で意気込みを語るサントリーの高橋藍選手(中央)。開幕戦では西田有志選手(右端)らが所属する大阪ブルテオンと対戦する=東京都内で2024年9月30日、小林悠太撮影

 バレーボールの新しい国内トップリーグが11日、華々しく始まる。これまでの「Vリーグ」を再編して「SVリーグ」と名称を変え、「2030年までに世界最高峰のリーグを目指す」と宣言する。11日夜、東京体育館で行われる男子開幕戦のサントリー対大阪ブルテオンは、異例ずくめの幕開けとなった。

黄金カード「高橋藍VS西田有志」

 「今回、地上波でたくさんの方々に見てもらえる。まずは『バレーボールって面白いな』と思ってもらえるようなプレーをしていかないといけない」

 男子日本代表の主力でリーグの「顔」でもある高橋藍選手(サントリー)は、地上波のゴールデンタイムに生中継される開幕戦に向けて力強く意気込みを語った。

 これまでテレビで中継される機会が多く、世間の認知度が高い日本代表に比べ、国内リーグの注目度は低かった。

 最後に地上波で中継されたのは10年4月。週末の日中に行われた男女の決勝で、NHKの放送だった。

 しかし、ここ数年で男子バレーの人気が急激に高まった。今夏のパリ・オリンピックでは、男子準々決勝のイタリア戦が全競技で最も高い視聴率を獲得した。

 追い風を受け、今回、開幕戦が11日午後6時50分からフジテレビで生中継されることになった。

SVリーグの開幕記者会見に集まった男子の各チームの主力選手たち=東京都内で2024年9月30日、小林悠太撮影

 SVリーグによると、放送時間帯に関わらず、地上波では14年ぶり、民放に限ると20年ぶりという。関係者は「リーグの地上波ゴールデンの放送は、記憶の範囲では初めてではないか」と話す。

 注目を集めるため、日程を工夫した。大河正明チェアマンは「12日からプロ野球のクライマックスシリーズがあり、重ならないよう、11日の金曜夜にした」と舞台裏を明かす。

 また、試合会場は東京だが、サントリーと大阪ブルテオンはともに拠点が大阪だ。試合はホームで行われる原則から逸脱するが、大河氏は「一生に一度だけの新リーグ開幕戦。プロ野球の巨人対阪神のような伝統の一戦にするため、(チームの本拠地に関わらず)これまでのバレーの歴史を考えて決めた」と説明する。

 リーグ名が「Vリーグ」となった1994年以降の30シーズンで、最多10回の優勝がサントリー、続いて6回が大阪ブルテオン(旧パナソニック)で、昨季の決勝も両チームだった。

 また、セリエAでプレーする石川祐希選手(ペルージャ)とともに、男子バレーの人気トップ3の高橋藍選手と西田有志選手(大阪ブルテオン)がネットを挟んで対決し、「黄金カード」となった。

SVリーグの開幕記者会見で意気込みを語る大阪ブルテオンの西田有志選手(背番号11)。高橋藍選手(背番号12)らが所属するサントリーと対戦する=東京都内で2024年9月30日、小林悠太撮影

 観戦チケットも瞬く間に売り切れ、日本代表の守りの要、山本智大選手(大阪ブルテオン)は「男子バレーの人気がさらに上がるよう、見ている人たちをワクワクさせるプレーをする」と意気込む。

ライト層の取り込みが課題

 しかし、課題もある。名称は変わったが、サッカーのJリーグやバスケットボールのBリーグのようなプロリーグになったわけではない。関係者からも「何が変わったのか分かりにくい」という声が相次ぐ。

 バレーのリーグは、これまで実業団主導で、親企業に依存した経営だった。「いかにバレーで収益を得るか」という運営面のプロ意識は、すべてのチームに浸透しているとは言いがたい。

 一方で選手のプロ意識は高く、西田選手は「今の期待を選手一人一人が感じ、危機感を持っていくことが大事」と表情を引き締める。

 ファンは人気選手の「単推し」が多く、SVリーグのチーム全体を応援する「箱推し」は少ないのが現状。パリ五輪の活躍で「代表選手を一度は生で見てみたい」と会場に足を運ぶライト層のファンをいかに定着させるかも重要だ。

 日本代表の高橋健太郎選手(ジェイテクト)は「初見のお客様が『こんなものか』と離れていかないような努力が必要。本当にプレッシャーを感じている」と話す。

 選手、関係者の思いを代表するように、前日本代表主将の柳田将洋選手(東京グレートベアーズ)はこう語る。

 「走り出したばかりで、今はリーグの完成形ではない。これから試行錯誤して、さらに良いリーグになっていくのが目標だと思う」

 華々しく始まったSVリーグの成否は、これからの取り組みにかかっている。【小林悠太】

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