相撲どころの郷里に帰ると、通った道場に顔を出す。まわしを締めて、後輩の子どもたちに稽古をつける。当たりを受け止めながら、「いい出足。自信を持って」と励ます。土俵で教えていると、自然に笑みがこぼれる。

 青森県鰺ケ沢町で生まれ育った今日和(こんひより)さん(27)は、女子相撲の第一人者だ。身長160センチ、体重100キロ。力強い押しを生かし、世界選手権で3度の準優勝を果たした。今も実業団で現役を続けている。

 夢がある。「女子相撲を国際的に広めて、五輪の種目にしたい」。その第一歩を踏み出した。4月から、国際協力機構(JICA)の青年海外協力隊員として、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで指導に励んでいる。

 任期は2年間。「教えたいことの量が多くて、間に合うかなと焦っています」と言いながらも、手ごたえは十分のようだ。

 情熱は、中学生のときに芽生えた。「相撲は心技体のすべてをぶつけ合えるのが魅力。言葉が通じなくても交流できるし、まわしだけあればいいから、経済的に恵まれない地域でも楽しめる。海外で普及させたいと思ったのです」

 いま教えているのは、子どもから大人までの約30人。成長を感じる瞬間が、何よりもうれしい。

 先日、四股を100回踏めるようになった生徒が、「自分に勝てた気がする」と喜んでいた。その姿を見て「確実に何かを学んでくれている」と実感した。

 持ち前の明るさも、教え子をとりこにするのだろう。いつも、「私たちの先生になってくれてありがとう」と感謝されている。

 6月の南米選手権では、指導したアルゼンチンチームが団体で男女とも準優勝した。「選手たちは伸びしろがあるし、競技として、もっと発展する。そんな希望にあふれています」(渡部耕平)

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