弱小相撲部のサクセスストーリーを描いた映画「シコふんじゃった。」(1992年)。2022年には動画配信サービス「ディズニー+」でドラマとして30年ぶりにリメークされ、人気が衰えないこの作品のモデルとして知られる立教大相撲部が、14日正午から大阪・堺の大浜公園相撲場で開かれる「第49回全国学生相撲個人体重別選手権」(毎日新聞社など主催)に出場する。土俵に登場するのは男子部員5人のうち東日本体重別を勝ち抜いた2人。本木雅弘さん主演で日本アカデミー賞最優秀作品賞にも輝いた人気映画と同様、部員不足に苦しんできた古豪が今、復活の兆しを見せつつある。【大村健一】
立教大相撲部は1919年創部。64年に堀口圭一さん(故人)が学生横綱に輝くなど強豪として名をはせた。しかし、その後は部員不足に苦しみ、82年から12年間は正式な部員がゼロに。柔道やレスリングなど他部から部員を借り、何とか存続した時期もあった。
この時期の奮闘を目にした大学OBの映画監督・周防正行さんが「シコふんじゃった。」を発表。映画のヒットに加え、「若貴」がけん引した相撲ブームもあって部員は増加。軽量級の個人戦で全国屈指の実績を残した時期もあった。しかし、それも長くは続かず、団体戦で他部からの応援が必要な状況は、大きく変わらなかった。
それでも、地道な努力は続けてきた。イギリス人留学生が奮闘する映画のように、海外からの留学生に相撲を体験してもらうイベントを開いたこともある。2018年には周防さんが相撲部の名誉監督に就任。稽古(けいこ)や大会に通い、選手たちを温かく見守ってきた。
相撲経験者の部員増 その理由は?
「私たちのころは大学で相撲を始めた初心者の部員がほとんどだった。しかし、最近は高校時代に相撲で実績を残している部員が入部するようになった点が大きい」。相撲部OB(1998年卒)で、今年就任した近藤真人志(まさとし)監督は、そう話す。
追い風を作ったのは、立教大が「知性・感性・身体のバランスがとれた学生」を育成することを目的に2008年度に創設した「アスリート選抜入試」にある。現3年生から相撲経験者が少しずつ入部するようになり、6月に開催された5人制の東日本学生選手権団体戦は「久しぶりに相撲部だけで戦えた」(近藤監督)という。
全国体重別に出場するのは、大学から相撲を始めた主将の山崎稜介選手と、東京の強豪・足立新田高出身の小宮山翔海(とあ)選手。ともに初出場の2人は85キロ未満級を戦う。初戦の相手は、山崎選手が西日本大会を制した桜田隼選手(近畿大)。小宮山選手は、世界大会でも活躍する東日本王者の奥知久選手(日体大)とぶつかる。
東日本体重別で8強まで勝ち進んだ4年生の山崎選手は、東京・芝高では野球部。相撲に興味はなかったものの、部のSNSで筋肉質の選手が多いことを知り、「相撲をやれば、こうなれるのか」と入部。経験者の後輩たちと鍛錬を積み、最初で最後の全国切符をつかんだ。「出るだけで自己ベスト。結果以上に、自分の相撲を取りたい」と話す。
2年生の小宮山選手は昨年、東日本新人選手権で、立教勢として60年ぶりに8強に入った。土俵際で逆転の居反りを放つなど身体能力は高く、「チャンピオンと自分がどのくらいの差があるのか。力が上の人と戦えるのが楽しみです」と意気込む。
85キロ未満級を含む大会の全取組は、毎日新聞デジタルの特設サイトでライブ配信される。
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