佐田の海(左)がはたき込みで玉鷲を破る=両国国技館で2024年9月9日、幾島健太郎撮影

大相撲秋場所2日目(9日、東京・両国国技館)

○佐田の海(はたき込み)玉鷲●(玉鷲は歴代1位タイの通算1630回連続出場)

 立ち合いは玉鷲の相撲だった。

 持ち前の突き押しで佐田の海を下がらせた。左でおっつけ、右からも押し込もうとしたが、佐田の海のはたきに足が流れた。

 「勝ちに行きすぎたのかなあ」

 連続出場を祝福するボードを掲げた観客に感謝しながら、39歳は攻め急いだ取組を悔やんだ。

 すり足の音が響く、9日朝の稽古(けいこ)場。記録がかかったこの日も、玉鷲は静かに汗を流していた。「朝が『年を取ったな』と一番感じる。一つ一つ、パズルを戻す感じ」。基礎の徹底こそが、相撲勘を研ぎ澄ますすべだと心得ている。

 ホテルマンを志していた玉鷲と相撲を引き寄せたのも、稽古場の音だった。

 すでに留学していた姉を訪ねて来日したのは、18歳の時。たまたま両国国技館周辺を歩いていると、聞いたことのない息づかいが耳に入った。

 「何だろうと近づいたら、(当時の)井筒部屋があった」。鉄砲などを繰り返す力士の中には、同じモンゴル出身で番付を駆け上がるさなかだった鶴竜(元横綱、現音羽山親方)もいた。モンゴル力士の草分けの旭鷲山(元小結)を紹介されて片男波部屋に入門し、現在がある。

 偶然の出合いから土俵に上がり続け、連続出場回数を積み重ねてきた。角界入りのきっかけにもなった音羽山親方は、敗れこそしたが押し相撲で見せ場を作ったこの日の取組を見て、「自分を貫く相撲をしているから今がある。素晴らしいことですね」と、優しい笑みを浮かべた。

 初日から2連敗となったが、いつものように支度部屋の玉鷲は丁寧に取材に応じた。「お客さんがいるから自分がいる」。3日目に出場すれば、連続記録は歴代単独1位に。「きょうの相撲を反省して、また明日」。気負いすぎないのもまた、「鉄人」の長所だ。【岩壁峻】

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