<取材ノート>
 「今回はいい悔しさだと思う」  メダルなしに終わったパリ五輪から2週間あまり。8月下旬に東京都内で取材に応じた卓球日本代表の張本智和(智和企画)は、東京五輪後との心境の違いをそう表現した。強がりではなく、話すうちに自分の言葉が腑(ふ)に落ちているようだった。

パリ五輪の報告会であいさつする張本智和=8月(木戸佑撮影)

 「東京の時は最後に(団体で銅)メダルを取ってしまったことでシングルスの課題があやふやになった。メダリストとして過ごす中で、良かったオリンピックだったと思い込みをしてしまった。今回は3種目全てダメで、明確にダメだったオリンピックとして次に進める。喜べなかった点では東京より(充実感は)低かったけど、いい悔しがり方ができているなと思う」  パリ五輪でのコメントは衝撃的だった。  「死んで楽になるなら死にたい」  団体準決勝のスウェーデン戦。2-2で迎えた第5試合を託された張本智は、あと1ゲームで勝利という状況から3ゲーム連続で落として敗れると、膝から崩れ落ち、そう言った。3位決定戦もフランスに惜敗。混合ダブルス、シングルスもメダルに届かなかった。底知れない失意とどう向き合っているのか知りたかった。  自身2度目の大舞台を「まだ弱さがあった」と総括。帰国後はわずかな息抜きを挟んで練習を再開したという。  「練習している方が無心でいられるし、部屋で休んでいてもふと思い出してしまう。卓球場にいる時が一番楽」  Tリーグが開幕し、国際大会も控える。気持ちの整理は簡単ではないが、身もだえしている暇もない。「卓球にはオフシーズンがない」という慌ただしさの中、4年後のロサンゼルス五輪に向けてスイッチを切り替えていた。  雪辱のための課題に「攻撃的な卓球」を挙げる。  「まだ時間はあるし、そういう(ふうに)取り組んだ失敗はいいと思うので、しっかり『全体的に張本が攻めてるな』という状況を増やせればいい」  4年後、「いい悔しさ」を糧にしたエースがどんな言葉を残すのか楽しみにしたい。(井上仁) 

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