“最年長記録はつくれる”
杉浦選手は50歳で初出場した東京パラリンピックで日本選手としての金メダル最年長記録を更新した直後、こんな印象的なことばを残しました。
「最年少記録は2度とつくれないが、最年長記録はつくれる」
そして、去年、世界選手権で2つの金メダルを獲得。
年齢を重ねても結果を残し続ける杉浦選手に周囲の期待が高まる一方、年齢による体力面への不安から結果が出せなくなってしまう不安に押しつぶされそうになったといいます。
“別腹”のデザート?
その不安に打ち勝つため、大会直前まで岐阜県の標高1200メートルの山奥で高地トレーニングを行い、練習を重ねてきた杉浦選手。
特に力を入れたのが、パリ大会のコースを想定した、およそ1キロの坂道の練習です。
海外勢に比べて体重が軽く、坂道が得意な杉浦選手はコース終盤の坂道の攻略が金メダル獲得の鍵だと考えていました。
このため、坂道を何度も繰り返し走って限界を迎えた後にあえて取り入れたのが「スプリント練習」です。
この練習をちゃめっけたっぷりに“別腹”のデザートにたとえた杉浦選手。この練習が、今回の粘りの走りにつながりました。
挑んだ決勝
1周14.2キロのコースを4周するおよそ56.8キロで争われた決勝のレース。
序盤から先頭集団でレースを進めた杉浦選手は最終の4周目、残り2キロ付近の最後の坂道。ここで一気に加速し、登り切ったところで後続の選手を引き離すことに成功しました。
この時、先頭集団は杉浦選手含め4人。
平たんな道に入ってフィニッシュまで残り200メートル。
スイスのフルリナ・リリング選手がスプリントを始めるのを横目で確認した杉浦選手は、強くペダルを踏み込みました。
この時の心境をレース後、杉浦選手はこう振り返りました。
「残り180メートルでスプリントをしようとしていたので、ちょっと早いと思ったが『私なら絶対にいける』と思った」
苦しく、つらい練習のあとでも逃げずに続けた“別腹のデザート”、スプリント練習の成果がここで発揮されます。
最後の最後で3人の選手による激しい競り合いをわずかに制してトップでフィニッシュしました。
レース直後「別腹のデザートは甘かったですか?」と尋ねると…。
「もう坂道で結構満腹と思っていたが、スプリントは別腹でした。めっちゃおいしかった!スプリントは別腹!」
苦しみながら53歳で挑んだパリ大会。
最後に今後の目標を尋ねると「まだわかりません。とりあえずビールが飲みたいです」と、とびきりの笑顔で締めくくりました。
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