第106回全国高校野球選手権大会で、試合後に語られる監督のインタビュー。勝ち負けに関わらず、思いがあふれ、目を赤くして語る指揮官たちの姿があった。涙とともに紡がれた言葉を振り返る。【構成・長宗拓弥】
▽1回戦
掛川西(静岡)8―4日本航空(山梨)
26年ぶり出場の掛川西は第46回大会(1964年)以来、60年ぶりに初戦を突破した。
掛川西・大石卓哉監督
<目に涙が浮かんでいます>
本当にここに来るまで支えてくれた方が多くて期待もいただいていた。応援に来た方に選手たちの輝いている姿や諦めない姿を見せたいと思っていて、それが体現できました。
本当に頑張った。プレッシャーもあったと思うが、選手たちにとっては初めての甲子園。この舞台でこんな野球ができるくらいたくましくなったなと思います。
▽2回戦
新潟産大付0―4京都国際
春夏通じて甲子園初出場の新潟産大付は1回戦で花咲徳栄(埼玉)を破り、初勝利を挙げた。2回戦では打線が3安打に抑え込まれたが、九回に満塁の好機を作った。
新潟産大付・吉野公浩監督
<九回は2死満塁にすると甲子園の大歓声がわき起こりました>
今まであの光景はテレビの世界。それが実際、自分があの場に立って、あのような歓声を受けて「本当に甲子園って温かいんだな」と思いました。ありがたかったです。
<試合後は涙ながらにインタビューを受けました>
選手たちの涙を見たら、ちょっと泣いてしまった。あとやっぱり、最後の2死満塁まで行って、甲子園全体の大歓声を受けて幸せだなと思いました。
▽3回戦
石橋(栃木)0―5青森山田
創立100周年で初出場の石橋は、初戦の2回戦で聖和学園(宮城)を破り、春夏通じて初勝利。23年春のセンバツに21世紀枠で初出場し、初戦敗退に終わった雪辱を果たした。
石橋・福田博之監督
もう子供たちが本当にね……120%を出してくれた。よく頑張って……。本当に頑張ってくれたと思います。ナイスゲーム。本当にうまくなったなと。
正直、どの学校も部員集めに大変だと思う。そこで高校野球が私学さんだけになってしまうとなんかドラマというか、青春、夢がなくなっちゃうと思います。野球好きな子っていっぱいいると思うんです。
ただ、そんなにうまくなくて私学から声が掛からない子も、やっぱり頑張ればもしかするとこういうチームがあるので、俺たちもできるんじゃないかと。そういった他の学校に勇気を与えられたらうれしいなと思います。
▽3回戦
大社(島根)3―2早稲田実(西東京)
32年ぶり出場の大社は大社中時代の第17回大会(1931年)以来、93年ぶりの準々決勝進出を果たした。早稲田実も九回に「内野5人シフト」でピンチを脱するなど延長十一回タイブレークに及ぶ激闘となった。
大社・石飛文太監督
本当にこの子たちの可能性、選手の生徒の夢は無限大だなと思います。
<延長十一回に今大会初出場の安松大希選手が犠打を決めました>
もちろん初出場だというのはわかっていました。ただ、あの場面で選手を集めて聞きました。「ここでバントを決められる自信がある者、手を挙げろ」と。そうしたら、安松が手を挙げて「サード側に決めてきます」と言ってくれた。私は信じるだけでした。
<安松選手のバントを見てどうでしたか>
泣けてきましたね……。
早稲田実業さんは本当に素晴らしい強い学校。ただ、(大社の)何人かは「サヨナラで決める」と言っていました。もう執念の一言じゃないでしょうか。
早稲田実・和泉実監督
いやー、ようやった。60歳を過ぎてこんなにいい試合、いい経験をさせてくれて、もうこいつらすげえなって思いました。
あー、甲子園のナイターってきれいだね。本当にお互いの生徒が美しかった。生徒の頑張りを見ると感極まりますね。
▽準々決勝
東海大相模(神奈川)1―2関東一(東東京)
元プロ野球・巨人の捕手で東海大相模OBの原俊介監督は指揮官として初めて臨んだ甲子園大会だった。
東海大相模・原俊介監督
一つ上に行けなかったのは私自身の課題。目標に掲げていた頂点は近いようで遠かった。力だけではなく、いろいろなものがかみ合わないと難しいと感じました。
<監督として初めての甲子園大会でした>
素晴らしい。私自身も夢の中の世界できらきら輝いていました。
滋賀学園0―1青森山田
滋賀学園は大会初勝利を挙げると3勝でベスト8入り。準々決勝は青森山田に零封負けした。
滋賀学園・山口達也監督
<目には涙が浮かんでいます>
本当に3年生中心のいいチームだったので、彼らとの野球が終わってしまうと思うと、ちょっとこみ上げてくるものがありますね。
きょうの朝まで、本当に変わりなく淡々と一生懸命に浮かれることもなく過ごしていた。良い3年生でした。
高校野球を堪能したなと声をかけたい。次のステージに行く子も多いので、今日の悔しさは忘れずに頑張ってもらいたいなと思います。
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