練習で数人に分かれ短距離をダッシュする石橋の選手たち。1回ごとに集中し、力を出し切ることを心掛けている=栃木県下野市の同校グラウンドで2024年7月31日午後0時12分、池田一生撮影

 第106回全国高校野球選手権大会に出場している石橋(栃木)は13日の第2試合で聖和学園(宮城)との初戦に臨む。栃木大会で接戦を勝ち上がり初優勝を果たした石橋の強みは「粘り」。持ち前の集中力で生まれる“粘りの野球”で甲子園での初勝利を目指す。

 栃木大会決勝後、福田博之監督は「選手たちの逆境での粘りが、良い結果をもたらしてくれた」と優勝の要因を語った。この言葉通り、栃木大会は僅差の試合での粘り強い戦いぶりが光った。

 3回戦の宇都宮工戦では、2点リードで迎えた九回に1点を失い、なおも二、三塁と一打逆転のピンチが続いたが、マウンドの入江祥太選手(3年)が踏ん張りを見せて逃げ切った。続く宇都宮商戦、準決勝の作新学院戦でも、ピンチの場面で投手陣があと1本を許さなかった。

 決勝では打撃陣が粘り腰を発揮。初回に5点を失い試合の流れが相手に傾いたが、二回に満塁から8番の伊沢颯盛(りゅうせい)選手(3年)の三塁打などで4点を返すと、六回にも満塁から2者連続で四球を選ぶなどしぶとい反撃で9―8と逆転。この試合も九回に一打同点のピンチを招くも、入江選手がしのいだ。

 この“粘り”を生むものは何か。福田監督は短い練習時間で培ってきた選手たちの集中力を挙げる。進学校である石橋では勉強時間の確保のため、平日夕方の練習は2時間程度。短時間で上達するため、集中して練習に取り組むことを選手たちには常に課している。

 短い距離をダッシュする練習で、最後の数メートルで力を抜いている選手がいれば「出し切れよ」とお互い声を掛け合うなど、集中を欠いたり、手を抜いたりしていれば指摘し合う雰囲気がグラウンドに流れている。原佑太選手(3年)は「練習で高めた集中力のお陰で、試合の大事な場面でみんな力を出せていると思う」と言う。

 また、福田監督は日ごろから選手たちに「机に向かっている時も野球はうまくなる」とも言い聞かせている。練習後の疲れた状態でも勉強に取り組むことで、集中力や考える力が養われ、それがグラウンドでも発揮されると信じているからだ。栃木大会で幾度も粘りの投球を見せた入江選手は「野球も勉強も全力で取り組んでいるところが、僕たちの大きな強みだ」と語る。

 今大会、夏初出場の公立進学校としても脚光を浴びる石橋。福田監督は「文武両道を追い求めているからこそ、粘りの野球ができている」と独自のチームカラーに自信をのぞかせる。甲子園では全国の強豪校相手にどんな粘りを見せてくれるのか注目だ。【池田一生】

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